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既報(ESSが世界初、MQAハードウェアレンダリング対応のオーディオ向けDAC「ES9068Q」/編集部:風間雄介 2019年01月04日)の通り、ESS Technology社がMQAレンダリング機能を統合したDAC ICのリリースを正式発表いたしました。先述の記事によると2019年1月のCESでお披露目となるようですので、2018年5月の
プレリリースから1年以内の動きになります。
MQAレンダリングとは?
そもそもMQAレンダリングとはどういうものなのでしょうか。当ブログの過去記事と既知の事項からのおさらいです。
1. MQAエンコードファイル(以下、MQAファイル)のデコードには3つの区分
- Authenticate (認証)
- Decode (デコード)
- Render (レンダー)
MQAによると、認証とデコードはソフトウェア(TIDALデスクトップアプリ、Audirvana、Amarra等)でも行われますが、レンダーはハードウェア(DAC)で必ず行われるものだそうです。DAC製品には認証・デコード・レンダーを全て行うものがあるということです。MeridianやMytekのDAC製品が該当するでしょう。
一般的にデコードを行う製品はデコーダー、レンダーのみを行う製品はレンダラーと呼称していますが、レンダラーは認証・デコードは行ないません。
レンダラーの需要は、たとえばUSB Audio Class1スペックのUSB-DACのような96kHz上限の製品の場合、ソフトウェアデコーダーで96kHzまでのコアデコードを行い、レンダラーでオリジナルサンプリングレート(たとえば384kHz)まで展開するような場面にあり、他にもメーカーが既存製品のMQA対応へローコストで負担が軽くアップグレードできるなど、メリットがあるようです。(*1)
2. MQAファイル再生は4通りの選択肢
24bit/192kHz MQAファイルの場合 (括弧内は呼称) [角括弧内は展開数]
- デコーダーなし... 24bit/48kHz (ノンデコード)
- ソフトウェアデコード[1st]... 24bit/96kHz (コアデコード)
- ハードウェアデコード[1st & 2nd]... 24bit/192kHz (フルデコード)
- ソフトウェアデコード[1st]とレンダリング[2nd]との組み合わせ...24bit/192kHz (フルデコード)
24bit/352.8kHz MQA-CDの場合
- デコーダーなし... 16bit/44.1kHz (ノンデコード)
- ソフトウェアデコード[1st]... 24bit/88.2kHz (コアデコード)
- ハードウェアデコード[1st & 2nd]... 24bit/176.4-352.8kHz (フルデコード)
- ソフトウェアデコード[1st]とレンダリング[2nd]との組み合わせ...24bit/176.4-352.8kHz (フルデコード)
コアデコードは認証とサンプリングレート2x (88.4 or 96kHz)までの一次展開とデータレートを復元し、ソフトウェアデコーダーが該当します。フルデコードはコアデコードとレンダーで成り立ち4x以上 (たとえば176.4 or 192kHz)までの二次展開と必要な特定のフィルタのレンダリングを実行し、ユーザーの”エンド”をもう一つの”エンド”であるスタジオにリンクさせるMQA DACマネージメントを含み、ハードウェアデコーダーが担います。ソフトウェアデコードとレンダラーとの組み合わせでは同様に4x以上の展開です。レンダラーとフルデコーダーの違いは一次展開をソフトウェアデコードするかどうかの違いで、いずれのレンダリングも実行される唯一の方法はMQA認証DACだけということです。(*2)
コアデコード(88.4 or 96kHz)より上の展開を行う場合はフルデコードと称し、サンプリングレートはMQAファイルまたはMQA DACに依存しますので、
- 24bit/192kHz MQAファイルを24bit/384kHzスペックのMQA DACでデコードした場合、再生時のレゾリューションは24bit/192kHz。
- 24bit/352.8kHz MQAファイルを24bit/192kHzスペックのMQA DACでデコードした場合、再生時のレゾリューションは24bit/176.4kHz。
- MQAのサンプリングレートは44.1系と48系の倍数に従う。
ということになるでしょう。
3. EQとMQAレンダリング
パラメトリックEQ機能を持つRoonの場合、シグナルパスはRoonでMQA認証後、MQA信号情報を保持したままコアデコード、24bitから64bit Floatへビット変換、パラメトリックEQ処理を行い、再び64bitから24bitへビット変換しMQA信号情報を符号化、MQA対応DACでレンダリングされます。一見複雑な信号経路ですが、ベースは認証・コアデコードとレンダーの組み合わせです。(*3)
今まで既製DAC ICもFPGA DACもMQAレンダリングはマニュアルチューニングでしたが、ESS Technology社のMQAレンダリング機能はオートチューニングできるようです。ESS Technology社の
リリースを読むとFPGAやDSPが担っていた機能のDAC ICへの統合路線があり、かたやMQAデコーダはDAC ICのアップサンプリングをバイパスする経路があり、DAC ICのカスタマイズ化の傾向という点は興味深い内容です。
注釈:
(*1) Bob Talks:
MQA Playbackより参照。
(*2) MQAより。
(*3)
レビュー Roon - MQA ソフトウェアデコード、DSP EQ検証より参照。
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