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レビュー 立体音響ラボ バーチャル・オーディオ・リアリティの世界

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  株式会社アコースティックフィールド さん主催のACOUSTIC FIELD presents『立体音響ラボ Vol.7』立体音響ワークショップ #7 「バーチャル・オーディオ・リアリティの世界」へ行ってまいりました。 場所は東京・お茶の水駅からすぐのRittor Base。地下1階へ階段を下りていきます。 扉を開けると、薄暗い室内にPCやモニター類。  暗幕カーテンの中に3つの球体、アコースティックフィールド・久保二朗氏とスタッフが機材を調整中。  ヘッドホンを装着しタブレットPCをキーボード操作している模様。NGを前提にカメラを構えると、撮影OKが出ました。複数のアプリケーションが起動しています。  シュアーのヘッドホン。ヘッドバンドにトラッカーが装着されています。  球体はシルバーカラーのスピーカー。ワイヤレス?実はダミー。体験者に方位感覚を示すために設置しているとのこと。  暗幕カーテン内で照明を落とすとダミースピーカーだけが浮き上がってきます。体験者はこのトライアングルの真ん中に立ち、ヘッドホンとリュックサックを背負い立体音響を体験することになります。  ここで一部体験者インタビュー。 イベンター:面白かった。もし暗幕でなかったら、と想像した。 制作者:視覚を奪わないのでいい。雰囲気作りが短い時間でできる。 プログラマー:ヘッドセット使ってない。土砂降りだけど濡れていない。絵がないぶん想像する。映像と組み合わせてもいいが、単純に音だけでもいい。音だけの方が解像度があるようだ。 会社員:音が当たる。面ではなく音が降ってくる感覚。沖縄にいるような不思議な体験。インスタレーションのようなアートで使われることになれば世界観が広がるのではないか。 サウンドデザイナー:素敵。敏感さが素晴らしい。立体感のある雨がいい。映像より音だけの方が広がるのか。 サウンドデザイナー:高さ方向が出ていた。動いているか感覚があった。画面がないことが新鮮。  筆者の感想も重なりますが、冒頭は音の定位音像や質感に聴感が集中しました。やがて、近くに聞こえる音に手を伸ばすが何も無い。音がある方へ歩み振り向くが何も無い。天井から降るモノに包まれているはずが、身体には何も及ぼされていない。不思議な感覚の臨場感と没入感。  さらに、ヘッドマウントディスプレイのない状態は視野に自由さが加わり、立体音

コラム いま聴く2018年のアニソン3選

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 1970年代は漫画がアニメへと展開した時代でした。漫画本や週刊少年ジャンプ、コロコロコミックなどマンガ雑誌のコンテンツがテレビで放映されたり映画化されたり、数多くのタイトルが動画として視覚化されました。また番組や映画の主題歌や挿入歌がヒットし、のちにアニメブームと言われる時代でした。  その時期には国内アニメだけでなく海外アニメも放映されており、ディズニーはもちろん「トムとジェリー」などもテレビで流され、SPレコードを蓄音機で回したかのような古きアメリカ映画音楽的なBGMが使用され、そのサウンドが当時はとても新鮮で今でも記憶に残っている印象深いものでした。  さて昨今は再びアニメブームだとか。そのトレンドに追いついていないのでムーブメントの中身はよくわかりませんが、音楽配信サイトでアニソンのタイトルをよく見かけます。そこで最近アニソンはどんな曲がヒットしているのか配信サイトでプレビューを聞きました。そして今回はその中から心に留まった音楽のレビュー的なコラムです。  セレクトした楽曲は e-onkyo 年間シングルランキング - ANIME/GAME 、 mora 2018 年間ダウンロードランキング TOP100 にリストアップされている楽曲です。なお、今回は楽曲をモチーフに致しましたので、アニメ/ゲームの中身とは無関係な内容です。予めご承知おき下さい。 Ref:rain [Amier]       Aimer (エメ) 2018年2月発売のシングル「Ref:rain/眩いばかり」の中の1トラック。フジテレビ”ノイタミナ”「恋は雨上がりのように」エンディングテーマです。作詞はaimerrhythm (Aimer)、作曲は飛内将大さん、編曲・プロデュースは玉井健二さん。玉井、飛内両氏は今をときめくヒットメーカー集団、音楽プロデュースチームagehasprings所属です。  ピアノから始まるイントロにAimerさんの繊細な声が乗ります。リフレインするA-Gのキーのフレーズが降り続く雨をイメージし、憂い気の雨のなか言葉を音に乗せて謳い続けるAimerさん。サビはシンプルな8ビートのリズムにC-D-Eのコード進行、そこにオーケストレーションが支える、いわゆるロックバラード。ナイーブなA-Bメロと心が強く叫び続けるサ

DIY フルレンジ・ブックシェルフスピーカー

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 学生時代は情報処理の実技が必須科目でした。ブラウン管モニターの黒画面に白い英数字のコマンドをキーボードで打ち込み、計算をしたり線を描いたりと。前者は微分積分、後者は丸・三角・四角の組み合わせだったような記憶。WindowsのBIOS画面のようなものです。その後、学内に3次元レンダリング処理が可能なCADシステムが設置されました。  3次元レンダリング処理とは言っても、基本はコマンドを打ち込みXYZ軸に反映させるというプリミティブもので、円柱・円錐はいいとしても、色付けなどのオブジェクト表面処理を行おうものならレンダリングにかなりの時間がかかり、おそらく3コマの講義のうちレンダリング用に1コマを使うような時代でした。  時は過ぎて、上図はAutodesk Fusion360でドローイングしたものですが、3Dはオンタイムでレンダリングできました。しかもクロスプラットフォーム、クラウドからでもアプリケーションを読み込め、データは自動保存する。3Dレンダリングに一晩かかったり、Macがフリーズしたり、PCが落ちてデザイナーが嘆く場面はもはや昔話なのかもしれません。  数年前に 新しいスピーカー を迎え入れました。そのスピーカーを選択したポイントは複数ありますが、とくに感銘したのは低域の質でした。低く深く音が素直に反応よく出る。コンサートホールで聞く生音と比べても違和感が少ない。そして同時にバックボーンにあるアコースティックな理論に好奇心を持ちました。  翻って、 私的LS3/5Aを作ろう! で作ったスピーカーはサウンドイメージが良く、記事更新後もあれこれとネットワークやシステムを修正いたしましたが、サウンドステージは課題として残りました。そこで今度作るならば音の質やバランスに留意してスピーカーを作ってみたいと思い温めて続けて参りました。  今年に入り大まかなプランを構想し、ドライバーを入手しモックアップを簡単に作りましたが、残念ながら思うような音が出ませんでした。その後はDIYに時間を費やす暇が無く、年末まで持ち越して今日に至ります。でも折角の内発的動機ですので、時間をかけでても失敗してでも結果はどうであれ、とにかくスピーカーを作ってみようと思っています。  自作するスピーカーはオーソドックスなフルレンジのブックシェルフスタイルです。ドライ

レビュー ブロッドマン Brodmann Acoustics Festival F2

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 演奏会の開演を告げる一瞬は、いつも身が引き締まる思いを致します。ときにその空気は張り詰め、息苦しさを覚えることさえあります。ときにその気分は晴れやかであり、身震いするほどの期待感を催すことさえあります。演奏会の開演時刻の一瞬は、客席を現実の世界から異次元の世界へと誘う入り口なのです。  舞台中央に配置された漆黒のベーゼンドルファー。その佇まいには技巧を継承した熟練の楽器職人の手で細部まで丹念に作り込まれた格段の資質と、調律師達により整え仕上げられ、世界各地からコンサートホールに出向いた数多の音楽家達により磨き上げられた威光が滲み出ているかのようです。  やがて舞台袖からピアニストが歩み寄ります。椅子に腰を掛け鍵盤に手を添えたとき、深い無音が舞台とホールとを支配します。その音の深さは零であり無限でもあります。その音に色は無く、まるで虚空のように掴みどころがありません。しかしなぜかぬくもりが感じられます。あたかもピアニストの熱量が客席の聴衆に伝わるかのように。  ピアニストが鍵盤をそっと押さえると、張り詰めていた緊張から解き放たれます。膨らんでいた期待が喜びへと変わります。幾重の弦と響板とが共鳴し複雑な構成を為した音は、コンサートホールの四方へと隅々にまで行きわたり、ピアニストの奏でるベーゼンドルファーの音とホールが持つ独自の響きとが融合し、唯一無二の音へと昇華いたします。  その邂逅した音はすなわち、聴衆の記憶と音響技師による記録へと刻み込まれるのです。  音響装置から音が出る一瞬もまた、重なる思いを致します。細心丁寧に運ばれ、手套をつけそっと箱から出された音響装置は存在感を示します。思索熟考の経過が脳裏を過ぎり、その果ての迎え入れの準備には清々しい思いさえ抱きます。装置の埃と導線端子を洗浄布で拭き、輝きをとり戻した機器を注意深く慎重に接続し直します。せめてもの礼と申しますか。  さて準備が一巡し、贔屓のレコード盤をスリーブから注意深く引き出します。ターンテーブルへそっと置き、スイッチを入れるとヴァイナルが回り始める。トーンアームのヘッドシェルに指をかけ外周に針を落とす。あるいはスマホ・タブレットの画面にあるプレイリストの音源をタップし、アンプのボリュームを少しづつ上げてゆきます。背筋が伸び、音が出る一瞬がそのときです。  Bro

レビュー MQAライブストリーミング解説 - Mick沢口氏インタビュー

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MQAライブストリーミング イメージ  2018年11月16日、世界で4例目となるMQA Live Streaming(以下、MQAライブストリーミング)のデモンストレーションがInterBEE 2018 コンファレンススポンサーセッション会場(千葉・幕張メッセ)で行われました。また同時刻に2018東京インターナショナルオーディオショウ(東京国際フォーラム)の会場内2ブースにもストリームされ、期せずしてブレークのない優れた音質のMQAライブストリーミングに遭遇した読者もいることでしょう。  以前はロンドンからのMQAライブストリーミングでしたが、4回目は東京・銀座の音響ハウススタジオからのライブ配信。しかも録音・配信のホスト役を担ったのは沢口音楽工房・ UNAMASレーベル 代表の沢口"MICK"真生氏。沢口氏と言えば、いま話題のMQA-CDのパイオニアの一人とも言える人物(*1)。そこで沢口氏にMQAライブストリーミングを探るべくおたずねしたところ、ご多忙にも関わらず解説して頂き、たいへん興味深い内容でした。  そしてこの度、沢口氏によるMQAライブストリーミング解説を当ブログで記事にさせて頂くことになりました。記事化にあたりまして、読者の皆さんに伝わりやすいようコンテキストが掴めるQ&A形式を採用させていただいております。MQAライブストリーミングって何?どのような仕組みなんだろう?解像度は?今後の展開は?等々、素朴な疑問を元に質問いたしましたので、概要は掴めるものと考えています。なお一部内容は構成の都合上編集させて頂いております。 *音響ハウス・スタジオ収録時の模様の写真を追稿致しました。沢口様、ありがとうございます(2018/12/10)。 ・  スタジオ内リハーサルの風景 写真提供:沢口氏 (以下同)  Q1 MQAライブストリーミングが成功しました。率直な感想をお聞かせ下さい。( - INORI、以下同)   沢口氏「世界で4例目となるMQA LIVEストリーミングが成功したことを嬉しく思っています。通常のインターネット回線で192kHz/24bitのまさにマスター音楽がユーザーへ届けられるという、すごい時代だと実感しました。またBob (Stuart氏 *2)がロンドンか

Frostwork / 加藤真亜沙 [music review]

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  加藤真亜沙 (Kato Martha)による2017年4月22日発売(レコードストア・デイ)のアナログ盤 12inch EP Edition「Tales from The Trees / アンモーンの樹」からの1トラック。通常盤は2016年9月発売。アルバムアートはMotoji Katoさんによるドローイング。アンモナイトとプランツをモチーフにした絵画。アートワークはTaiji Kurodaさんと加藤さん。  レーベルは SOMETHIN'COOL 。録音は2015年8月24日 Dave Darlington氏(Water Music)、2015年12月6日 Andy Plovnick氏(Bunker Stidio)、エディット・ミキシング・マスタリングは2016年 Dave Darlington氏(Bass Hit Recording)がクレジットされています。Small Sky(武満徹 作品)を除いた全曲は加藤さんの作曲、セルフプロデュース作品です。  加藤さんのピアノの微細な音から始まるイントロダクション。美しいピアノの音の粒にウッドベースが重なり、サスティーンの背景にシェイク音、ギター音が現れては消えます。1分を超える導入部分。やがてトランペットとクラリネットが主旋律を奏で始めます。哀愁的なフレーズです。エレキギターとピアノが同じ旋律をなぞり、トランペットとピアノが絡み合いながら旋律を繋げます。  小休止のあと、再びピアノのイントロダクション。トランペット、ドラム、ギターがハーモニーで重なり、ついに融合し、三拍子のシンプルでインプレッシヴな主旋律を奏でます。リフレインしながらメロディとリズムが次第に大きなうねりとなっていきます。バッキングボーカルが入りクライマックを迎え、そして最後には管楽隊とピアノの柔らかな音が消え行くよう静かに楽曲を終える7分間。  フロストワーク - 霧の花- ピアノの音のパウダーが多様な楽器とのハーモニーを経て、ついには大きな森林、大河、大海原に合流し、レンジの広い壮大なシンフォニーに昇華する。クラシック的でもありロック的でもあり、ジャズという枠を超えたクロスオーバーな魅力があります。そして何故だかわかりませんが、思わず涙してしまうくらい感情を揺さぶられるドラマティックな楽曲です。

レビュー 甲南大学 甲響学祭 & 大阪芸術大学 JAZZ&POPS guest 黒田卓也

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(ライトアップした中之島中央公会堂)  去る2018年11月3-4日、兵庫にある甲南大学・文化会交響楽団の甲響学祭(摂津祭)に行って参りました。甲南大学と言えば古くは関西政財界、実業家のご子息・ご令嬢が通う(イメージの)中高等教育一貫校の一つであり、今日的にもなお、コンサバティヴな校風が六甲山の麓から下りてくるようなカレッジです。  高等教育を終了以来、学園祭の類にはほとんど足を運んだことのない筆者ですが、SNSでの告知が偶然目に入った甲南大学・文化会交響楽団さんにはご縁を感じ、比較的アクセスが良いということもあり、大学の学園祭に潜入レポートをするつもりで参加致しました。近隣の駅を降り、閑静な住宅街を抜けると大学の門がありました。    学生の模擬店の元気の良い掛け声を横目に大学事務所のある1号館に辿り着くと喧騒を抜け出た静けさ。エレベータに乗り込むと居合わせた数人の方々と会場のある3階ラウンジへ。陽当たりの良い窓に面したスペースのおおよそ三分の二を楽団員のスペース、三分の一を観客席にセッティング。アットホームな雰囲気でした。  演目は ハリーポッターメドレー / arranged by Masaki Watanabe 大脱走のマーチ / L.Bernstein アンサンブル A DISNEY ADVENTURE / arranged by Chuck Sayre 行進曲 旧友 / C.Teike ハンガリー舞曲 第5番 / J.Brahms  座席はほぼ埋まり、予定時刻に司会を務める部員さんによる「甲南オケ(甲響)」の紹介、プログラムが始まりました。冒頭の楽曲こそ緊張が伝わりましたが、順を追ってポップス、クラシック、心地よい調べのアンサンブルと空間的なハンディこそあったものの演奏は十分に楽しめました。ラストのブラームス・ハンガリー舞曲 第5番は演奏に磨きがかかり迫力も加わり、もっと聴きたいと思わせる演奏会でした。  少し時間がありましたので、他の音楽系サークル(JAZZ研、UK、軽音楽部、フォークソング同好会)の部屋も駆け足で覗きました。なかでも1号館と接続している3号館で行われた甲南大学 JAZZ研究会。男性だけの漢バンド、女性だけのギャルバンドの2つのビッグバンドを観覧いたしましたが、部員の多さに驚きます

Mischievous mouse / 大江千里 [music review]

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  大江千里 による2017年1月発売のアルバム「Answer July」からの1トラック。アルバムアートはNishinoさん(キングコング)による精巧なイラストレーション。モチーフは大江さんらのバンドでしょうか。世界盤・ヴァイナル盤以外の通常盤はNishinoさんのイラストが入ったアートフレームを大江さんが抱えているショットとなっています。  レーベルは Village Music 、 Think! Records 、 PND Records 。ミキシング・マスタリングエンジニアはOscar Zambrano氏、アナログ盤の企画・監修は塙耕記氏。全てのトラックの作曲は大江千里さん、作詞はJon Hendricksさん、Lauren Kinhanさん、Becca Stevensさんがクレジットされています。大江さんのセルフプロデュース作品です。    Mischievous mouse、訳すれば”お茶目なネズミ”。作詞はJon Hendricksさん、ジャズ界のレジェンド。ボーカルはSheila Jordanさん、言わずと知れたビッグネーム。このトラックを含む作詞と同様にLauren Kinhanさん、Theo Bleckmannさん、Becca Stevensさんが参加し、ジャズボーカルをフューチャーした作品となっています。  Fメジャースケールでバンドが弾ける印象的な8小節のイントロダクション。ベースラインにピアノが乗り、シーラさんが歌い始めます。何やらおとぎ話を聞くときのような可愛らしい歌唱。verseからbridgeにかけての韻を踏んだ歌詞に引き込まれ、身体が音に合せリズムを刻みます。chorusはバンドメンバーによるバッキングボーカルが加わり、思わず楽しく歌い出します。  歌詞に記述のないシーラさんの歌唱パートにはネズミが踊り出す理由が語られています。要約すると、バースデーケーキを用意した家主の足下にネズミが踊りながら現れ、同じ日、同じ月、同じ年の誕生日を祝いに来たと告げます。日付は1928年11月18日...。そのシーンをイメージしながら楽曲を聞くと、何とも微笑ましくコミカルで洒落っ気のある楽曲に感じます。シーラさんのアドリブが小粋さに輪をかけます。  大江さんのYouTubeチャンネルではシーラ・ジ

Autumn Nocturne / 纐纈歩美 [music review]

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  纐纈歩美 (Koketsu Ayumi)による2018年3月発売のアルバム「アクアレール」からの1トラック。アルバムアートは纐纈さんの横顔のポートレイト。ボタニカルな髪のコサージュは背景のカラートーンと合せグリーン系でコーディネートされています。またLPのインナー/ライナーノートには異なるバージョンのショットが同封されています。  レーベルは Craftman Records 。録音は2017年5月10-11日、Yoyogi Studioにて行われ、エンジニアはKentaro Kikuchi氏。マスタリングは2017年7月、ポニーキャニオン・マスタリングルームにてYuta Tada氏、アナログ企画・監修は塙耕記氏がクレジットされています。纐纈歩美さんのセルフプロデュース作品です。        Autumn Nocturneはご存知、Josef Myrow作曲、Kim Gannon作詞のジャズスタンダードナンバー。古くはLou Donaldson、Art Farmer、Sonny Rollins等々...数々のミュージシャンやシンガーによってカバーされてきました。”Autumn Leaves”と並んで2大Autumn〜とでも申しましょうか。  ピアノのソフトなタッチのイントロダクション。ドラムのスティックブラシを叩く音がリズムを刻み出します。そしてアルトサックスがあたかも歌うように鳴り始めます。その音はハリがありますが、リリースのディテールがスモーキーに空間を漂い、歌詞にある哀愁を連想させる音色です。ボイスを超えたソロパートの音表現にしばし酔いしれます。  伴奏のピアノが美しく音階を駆け上り、コントラバスがアコースティックに深くドライに弦をつま弾き、ドラムがステーブルにライトに拍をとり、各パートがそれぞれの個性で主張する好プレイとバンドとしてのバランスのとれた一体感は耳あたりが良く、心地よく音楽に浸ることができます。そしてクリアーな音質。  アクアレール(透明水彩)。クリスタルのように透明なキャンバスにピュアな楽器の音色という水彩絵の具が広がり、そして所々に重なり混ざる。そのキャンバス全体を心を通して見れば、纐纈さんとKoichi Satoさん(piano)、Koji Yasudaさん(Bass)、Masanori

Souvenir de Florence (Allegro con spirito) / Unamas String Septet [music review]

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 Unamas String Septetによる2017年7月発売のアルバム「Souvenir de Florence (フィレンツェの思い出)」からの1トラック。アルバムジャケットはフィレンツェにあるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のフォトグラフ。夕景と思しき街の空と山々のカラフルな美しいグラデーションのアートワーク。  レーベルは 沢口音楽工房・UNAMASレーベル 、 Ottava Records 。録音は2016年12月13-14日、長野県軽井沢・大賀ホールにて行われ、プロデューサー・レコーディング・ミキシング・マスタリングはMick Sawaguchi氏、レコーディング・ディレクターはHideo Irimajiri氏(Armadillo Studio)がクレジットされています。      弦楽器のフォルテで始まる印象的なイントロダクション。バイオリンの奏でる主旋律の随所にスフォルツアート。その音に滲みはなく、しかし単色ではなく僅かに重なる響きを持ち合せます。サポートするビオラ、チェロがリズムを作り、そしてこの弦楽の録音には7人目にコントラバスが加わり、さらに深い低域を豊かに表現しアンサンブルを形成しています。  やがてビオラとチェロが旋律を奏で始め、バイオリンやコントラバスと共に弦楽の掛け合いが始まります。弱音と撥音の明瞭で敏活なハーモニー、しなやかや質感の幾重もの弦音、伸びたり跳ねたり躍動する音の展開に耳を傾ければ、自然と胸が踊ります。再び冒頭の印象的な旋律に戻り、やがてドラマチックに急展開し爽快にラストを迎えます。まさにAllegro con spirito (快活に、生き生きと)。    UNAMASレーベルのYoutubeチャンネルでは収録時の模様をご覧いただくことができます。    作品全体を通してみても、フォルテやスタッカートなどアーティキュレーションが見えてくるような明瞭な音のディテール。またアンサンブルのプレーヤーが操リ出す楽器の持つ響きがホール空間に溶け合い、それを再現する部屋全体に音が広がります。視聴の際は自然にボリュームコントローラーのレベルを上げ、高精細なサウンドと卓越したプレイングに聞き入ります。  「Souvenir de Florence (フィレンツェの思い出

レビュー クラウディオ・クルス & ブルーノ=レオナルド・ゲルバー

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 兵庫県立芸術文化センターで行われた「 第109回 定期演奏会クルス×ゲルバー・英雄&皇帝 」へ行って参りました。天高く澄み渡る秋晴れのスカッとした青空と心地よい陽気に恵まれた週末の午後。会場前広場には植栽の木陰で有閑に興じる人々やダンス練習に励む若者の姿が見受けれら、と同時に会場の入り口へと急ぐ人波に合流いたしました。  会場はKOBELCO 大ホール。ステージには中央に赤い絨毯の指揮台と中規模編成のオーケストラのセット。座席は1階左寄り後方。周囲を見渡せば老若男女、様々な年齢構成のオーディエンス。開演間近のアナウンス後、ステージ上手側の扉が開き、兵庫芸術文化センター弦楽団員(PACオーケストラ)の皆さんがステージに登場すると客席から拍手が沸き起こります。  続いてゲストコンサートマスターの田野倉雅秋さんが登壇し、チューニングが始まります。音程が揃ったところで客席が暗転、クラウディオ・クルスさんが下手からバイオリンの間を通り抜けステージへ一礼するとひときわ大きな拍手が起こります。これから前半はクルスさんとPACオーケストラの演奏です。  演目は ・序曲「コリオラン」ハ短調 op.62 ・交響曲 第3番 変ホ長調 op.55「英雄」  (休憩) ・ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73「皇帝」  今回はオール・ベートーヴェンのプログラムです。オール・ベートーヴェンと言えば、河村尚子さんが兵庫県立芸術文化センターのプログラムにおいてベートーヴェンに チャレンジ していたり、あるいは去る2018年10月14日 大阪・シンフォニーホールでゲルバーさんのベートーヴェン ピアノ ソナタのプログラムがありました。    序曲「コリオラン」作品62。クルスさんのタクトが素早く振り上げられ、印象的なパッショナートなイントロダクションで始まります。リードする管楽器を弦楽器がしっかりサポートするバランスを重視したような終始モデレートに徹する演奏。後の壮大な2曲を考えれば冒頭10分弱のオーバーチュアは選曲の妙を感じました。  交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」。弦楽器と管楽器が渾然一体となりシンクロし、スケールの大きな演奏。煌びやかな弦楽器、しなやかな弦楽器、コントラバスの深い低音が地を這い、ティンパニーの拳

Come Undone / Meiko [music review]

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  Meiko による2018年5月発売のアルバム「Playing Favorites」の中の1トラック。アルバムジャケットはMeikoさん(ミーコと発音)のポートレイト。タイトルのFavoritesとあるように彼女が学生時代から親しんできた楽曲を中心とするカヴァーアルバムです。  レーベルはChesky Records。録音は2017年9月8日、米・ニューヨーク・ブルックリンのヒルシュセンターにある古い教会にて、全てのレコーディングは1日で行われバイノーラル録音を採用。プロデューサーはDavid Chesky氏、Norman Chesky氏、レコーディング・ミキシング・マスタリングはNicholas Prout氏がクレジットされています。    Emコードから始まるアコースティックギターのソフトなストローク。Meikoさんがギターのストロークに合わせてソフトに歌い始めます。そしてまもなく印象的なVerseの途中で気づきます。Duran Duranの90年代の楽曲”Come Undone”のカヴァーあることを。Duran Duranのオリジナルはエフェクトの効いたエレクトリックなサウンドでした。  Meikoさんらのカヴァーはシンプルなアコースティックなギターのブリリアントな音色とキュートかつトランスペアレンシーな歌声が空間に響きわたる高精細でフォーキーな心地よいサウンドです。ベースコードを叩き弾くことによるギターの深い胴鳴りがリズミカルなオリジナルをイメージさせ身体がテンポをとり始めます。    MeikoさんのYoutubeチャンネルではアルバム収録時の模様をご覧いただくことができます。    この作品を含めてアルバムはMeikoさん(Vocal, Guitar)、Ed Maxwellさん(Bass & Synth)、Josh Dayさん(Drums)の3人構成で楽曲を演奏しているようです。それにしても意外なほどに音の多様さを感じます。また”Stand By Me”は有名な楽曲ですが、それ以外は今回取り上げた”Come Undone”やクランベリーズの”Zombie”を含め彼女が聞き込んだ選曲だということが伝わります。  当アルバム作品をPCに取り込みMQA対応DACのデコーダを通すとM

レビュー Mytek Brooklyn DAC+ Part5 デジタル接続編

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 今回はBrooklyn DAC+と他機器とのデジタル接続を中心にレビュー致します。  Brooklyn DAC+の豊富なデジタル入力端子はさまざまな機器との接続を可能にします。同じBrooklynのマルチをはじめ、A/D D/Aコンバータ、マスタークロックジェネレータ、レコーダー、エフェクター、ディスクプレーヤー、トランスポーター等。なかでもMQAデコードの可否については関心事の一つですので、MQA-CDをディスクプレーヤーで再生、MQA DACのデコードを検証いたします。  ディスクプレーヤーは SONY BDZ-EW1100 、2013年末発売の一般的なブルーレイレコーダーです。BDZ-EW1100のデジタル音声出力端子(光)を光デジタルケーブル(TOSLINK)でBrooklyn DAC+のデジタル入力端子(光)に接続し、各種フィジカルメディアを再生いたします。光デジタルケーブルはHOSA OPM303、ADAT, S/PDIF対応の普及価格帯のオプティカルケーブルです。    フィジカルメディアをディスクトレーに挿入、再生するとレコーダーの前面パネルとテレビ画面にプレイ表示、Brooklyn DAC+の前面パネルには解像度が表示されました。メディアとデコードの可否は以下の結果となりました。  左上:CD、中央:SACD(CD層は非MQA)、右上:MQA-CD  左下:SACD(CD層はMQA)、右下:Blu-ray Audio ・CD、SACD(CD層は非MQA):16bit/44.1kHz  ・MQA-CD、SACD(CD層はMQA):24bit/176.4kHz、24bit/352.8kHz  ・Blu-ray Audio:16bit/48kHz  デジタル著作権管理(DRM)されているBlu-ray AudioとSACDの場合、デジタル出力は通常ダウンコンバートされます。MQA-CDの場合はブルーレイレコーダーの光出力を通してBrooklyn DAC+でMQAデコードが確認できました。MQAの解像度はマスター音源のオリジナルレゾリューションにより異なっています。2L「FURATUS」はmShuttle機能を利用すればMQAデータファイルをPCに取り込める仕様で、今回は一事例としてご紹

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