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Adagio in G Major, D. 178 / Noelia Rodiles [music review]

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Noelia Rodilesによる2020年3月発売のアルバム「The Butterfly Effect」の中の1トラック。アートワークは黒色に塗装された外壁と思しき背景に真紅のドレスを纏ったノエリア・ロディレスさんのポートレイト。裏表紙まで外壁が続くショットがモダンです。作曲はフランツ・シューベルト。ロマン派を代表するコンポーザーの1人。

 レーベルはEudora Records。録音は2019年8月19-21日、スペインのAuditorio de Zaragoza(劇場)にて行われ、プロデューサーとレコーディングエンジニアはGonzalo Noqué氏、ピアノ技師はFernando Lage氏がクレジットされています。





 COVID-19感染症の伝播は、東アジアから欧米へと拡がり、ついにアフリカ大陸まで波及するパンデミック状況を生じさせ、人類の生命・生活・経済に多くの影響と脅威を与え続けています。私の住う地域では、つい先日、緊急事態宣言の解除がなされたばかりですが、この度の行動変容は現在でも継続しています。

 緊張感を伴う社会状況の混乱期にあってリリースされたピアノ作品です。なかでもノエリア・ロディレスさんのシューベルト・アダージョは、マイルドに心の琴線に触れてきました。レレレラミとシンプルな主旋律がゆったりと鍵盤を流れ、明活さのなかに静謐さを兼ね備え、たおやかな旋律でありながらエモーショナルな雰囲気も漂います。

 自室の窓外を見るに季節の移ろいを感じながら、温暖な天気が続く今季節が作品とマッチします。さらに、森林遊歩道を歩きながら木漏れ日を見上げたときに薫る、緑と陽光の匂いが入り混じる清々しい体験に重なります。この数ヶ月は演奏会へ出向く機会が無くなりましたが、いずれ来る希望の日常を待つに、穏やかにポジティブになれる演奏作品との思いで聴いています。

 アルバム全体を通じては、ロマン派の作曲家(シューマン、メンデルスゾーン、シューベルト)と現代のコンポーザー達との楽曲で構成され、ノエリア・ロディレスさんの演奏を楽しめるピアノ小品集です。当アルバム作品レゾリューションはMQA 24bit/352.8kHz。他にはSACD、DSF 1bit/11.2MHz、FLAC 24bit/192kHz、5.0ch 24bit/96kHzなどで配信(e-onkyo)しています。






コラム なぜオーディオやCDは売れなくなったのか!?



 ミレニアル世代が音楽消費しないという世界共通の課題について、アーティスト・レーベル・ディストリビュータ・サービスプロバイダは音楽消費方法を模索している状況です。その統計情報は以前、拙稿「MQAとStream The Studio」のコラムにおいて取り挙げましたが、彼らはスマホでYouTubeの音楽(ラインセンスのないものを含む)を聴く傾向にあります。そもそも音楽を買わなければ、ハイグレードなオーディオも買いません。


 オーディオはかつて耐久消費財でした。町の電気屋にハイグレードなオーディオが展示してあり、高校・大学を卒業、就職し結婚、二人家庭で先ず揃えるものの中にステレオセットがあり「いつかはクラウン」のような人生長期計画で段階的にオーディオ機器をアップグレードしていく価値観がありました。それは高度成長期、一億総中流時代の豊かさを象徴するシーン。オーディオ機器は真空管式からトランジスタ方式へ、機器が壊れたら町の電気屋さんやメーカーが家に来てメンテナンスするとういうものでした。

 やがて経済のバブル期が訪れます。人生長期計画で階段を一段一段登るようにオーディオをアップグレードしてきた慣習が変化し、マンガの両さんではないですが「いきなりクラウン」の時代になり、比較的若年層でも収入に余裕ができたのでハイグレードなオーディオを手に入れることができる様になります。オーディオ機器もマニア需要に応えるが如く物量投入した製品が供給されました。高級志向もさることながら一般家庭にさらに身近なゼネラルオーディオとして普及します。

 各社からレコード、カセット、コンパクトディスクプレーヤー、グラフィックイコライザー、サブウーファーを装備したセットコンポが発売されました。レギュラーサイズよりやや小ぶりで、客間やリビングではなく個室に置けるメディアムサイズ。そしてそれらは昔ほど壊れなくなりました。壊れても直すより買い換える。耐久消費財から消費財への変化です。この頃はまだ各種フィジカルメディアがよく売れていました。

 やがて国内経済はバブルがはじけ長期不況が訪れます(一般的に景気回復の実感がないという意味で)。サラリーマン家庭は家計を切り詰めるために耐久消費財の中から要不要なものを取捨選択することになります。その中で娯楽耐久消費財リストにオーディオが上位で入ることが無くなりました。オーディオ不況の始まりです。では統計データを見ていきましょう。


 はじめに、総務省統計局 平成21年全国消費実態調査 主要耐久消費財に関する結果の概要 平成22年7月30日公表(リンク)によると、主要耐久財の所有状況の結果において、表Ⅰ-1000世帯当たり主要耐久消費財の所有数量、増減率及び普及率(二人以上の世帯) では「ステレオセット又はCD・MDラジオカセット」の増減率が-14.3%となっています。

図1 1000世帯当たり主要耐久消費財の所有数量、増減率及び普及率(二人以上の世帯)(総務省統計より独自に集計)

上図1は総務省統計の表1からステレオ、ブラウン管テレビ、液晶のデータを抽出し修正したものです。読みやすいよう歴も変換しています。ブラウン管テレビから液晶テレビへの変化ほどではありませんが「ステレオセット又はCD・MDラジオカセット」の増減率は1999-2004年の-24.6%が顕著、2006-2009年の-14.3%はやや鈍化したとも見えますが減少傾向は続いています。また2台以上所有していること、普及率が高いことがわかります。


図2 1000世帯当たり主要耐久消費財の所有数量、普及率及び所有数量の増減(二人以上の世帯)(総務省統計より)


  図3 主要耐久消費財の普及率及び普及率の上昇・低下幅(二人以上の世帯)(総務省統計より)

 図2は平成21年の統計資料(PDFリンク)から抜粋した「図Ⅰ-1 1000世帯当たり主要耐久消費財の所有数量,普及率及び所有数量の増減(二人以上の世帯)」、図3は最新の平成26年全国消費実態調査結果の概要(PDFリンク)から「図Ⅰ-2 主要耐久消費財の普及率及び普及率の上昇・低下幅 (二人以上の世帯)」です。平成21年にあった「ステレオセット又はCD・MDラジオカセット」の項目が平成26年度には無くなっています。ステレオが主要耐久消費財で無くなったことが伺えます。



 次に、JEITA 一般社団法人 電子情報技術産業協会 民生用電子機器国内出荷統計(リンク)では2000-2017年5月までのオーディオ関連機器の年別国内出荷実績が参照できます。

図4 民生用電子機器国内出荷統計(オーディオ関連機器))
(JEITA 一般社団法人 電子情報技術産業協会 民生用電子機器国内出荷統計より独自に集計)

 上図4はJEITA統計からデータを抽出・修正し表グラフで可視化したものです。2000年から下降曲線で2010年に一旦上がりますが翌年再び減少します。2016年度から統計方法が変更され、市場で増加傾向にあったヘッドホンの出荷数も加味されるようになりましたので出荷金額・前年比は増加しました。しかし2014年度の金額を超えていないので微増というほかありません。2017年度はどうなるのかというところです。



 そして、日本レコード協会(RIAJ)の統計情報において、生産実績 年次数値(リンク)では過去10年間のオーディオレコード全体(CD、アナログディスク、カセットテープ)の数量・金額が参照できます。

図5 生産実績 過去10年間 オーディオレコード全体 (RIAJ統計より独自に集計)

 上図5は日本レコード協会の統計からデータを抽出・修正し表グラフで可視化したものです。レコード(CD、アナログディスク、カセットテープ)全体の数量・金額共に2012年に一旦上がりますが、下降トレンドであることは一目瞭然です。CDメディア減少の複合要因については今回はこれ以上言及しません。



 このように統計データからオーディオ不況とメディア売上減少を可視化することができます。景気との相関は必ずしもわかりませんがシンクロしていることは理解できます。そこでまた総務省統計局統計データから、家計調査家計調査(家計収支編)調査結果家計調査(家計収支編)時系列データ(二人以上の世帯)(リンク) 5. 長期時系列データ(年) 18-1 1世帯当たり年平均1か月間の支出-二人以上の世帯(EXCELリンク)を参照します。


図6 家計調査家計調査(家計収支編)調査結果家計調査(家計収支編)時系列データ(二人以上の世帯)(総務省統計より独自に集計)

 上図6、円形グラフは2000年と2016年度のデータを抽出・修正し可視化したものですが、食料と交通・通信費の割合が他より上がっています。円安為替とスマホ代の影響があるのかもしれません。また教養娯楽費の比率が変わらないことがわかります。娯楽費内での品目の変化があるのかもしれません。


図7 1世帯当たり年平均1か月間の支出-二人以上の世帯(平成12年〜28年)(総務省統計より独自に集計)


図8 1世帯当たり年平均1か月間の支出-二人以上の世帯(平成12年〜28年)(総務省統計より独自に集計)

 図7-8の表とグラフで小分類を見てみると、消費支出と教養娯楽費は少しづつ下がり続け、家庭用耐久財は微減ながら、小分類の教養娯楽耐久財の数字が減少していることがわかります。しかし教養娯楽用品の方は減少が小幅です。消費支出と娯楽耐久財支出が減少しています。



図9 世帯主の年齢階級別家計支出(二人以上の世帯)(総務省統計より独自に集計)

上図9は総務省統計局 統計家計調査報告(家計収支編)平成28年(2016年)平均速報結果の概要(PDFリンク)より表Ⅱ-1-1 世帯主の年齢階級別家計支出(二人以上の世帯)-2016年-のデータから世帯年の齢階層別家計支出における消費支出・教養娯楽平均額・同構成比を抽出・修正し表で可視化しました。教養娯楽の支出に大きな偏りがありませんので、やはり娯楽耐久消費財としてのオーディオと娯楽消費用品としての音楽メディアが他の品目へ移ったという分析が自然です。


 ということで、消費支出自体が減少しているなかで、娯楽耐久財と娯楽用品への支出があるにもかかわらず、必ずしもオーディオや音楽メディアへ投資されていない状況は、たとえばシニア世代をターゲットにしたマーケティングは一定の効果はあるけれども、ターゲティングを変えるだけでは効果は限定的なのではないかということを考えます。

 もちろんターゲティングの効果はあるでしょう。市場のパイが縮小する中でハイグレードを志向するメーカーはイニシャルコストを上げざるを得ませんから、少量生産・カスタマイズ・ライフスタイル込みの提案など付加価値付けで利益率を上げる方向へ向いています。それら製品は概してメーカーの技術と感性を結集したコンセプチャルな製品が多く、主なターゲットユーザーはマニア層や富裕層です。

 ミドルグレードの製品を志向するメーカーは、エントリークラスまで包括するクオリティ&パフォーマンスレベルを底上げし、技術的なイノベーションでのポジショニング戦略が見受けられます。ターゲットユーザーは主にマニア層でしょう。一方でゼネラルオーディオをも包括するメーカーは、いわゆるスマイルカーブで言う高収益の分野にポジションがないことが多く、高シェア低収益であることが一般的になっています。

 ただ一概に言えないのは、国内メーカーに多くあてはまることですがハイ・ミドル・ゼネラルの全グレードをリストに揃えて、言わばスケールメリットを活かしていることがあります。製品としてはヘッドホン関連がイメージしやすいのではないでしょうか。製品寿命と買い替えサイクルが長くなり、ユーザーはモデルチェンジで刷新する動機が薄くなりますので、メーカーは高収益モデルにも参入していくと。

 統計データに戻りますと、国内の二人以上の世帯は消費支出が減少傾向にあります。一方で富裕層向けの商品サービス志向があります。つまりターゲットユーザーの二極化があり、これがハイグレードとゼネラルオーディオの二極化の背景にある要因の一つではないかということです。決してミドルグレード製品が空白区であるわけではなく、単にその購買層がマニア層であるということで、ハイレゾと同様にマニア層しか購買していないということです。


 さて、ここまで統計データ等を参考にオーディオ・メディア市場をざっと見てまいりましたが、そこで感じることはより本質的な課題解決が必要だということです。消費支出が増える、つまり経済が本当に良くなることは言うまでもありませんが、概ねバブル期を経験した世代までは音楽消費の習慣がありますので余裕があれば音楽消費します。しかしその層は消費支出に余裕がありません。そして現在と将来、音楽消費の中心を担うミレニアル世代は以前の価値観と異なり、そもそも音楽消費が習慣化されていません。したがって状況がより深刻というわけです。

 そのミレニアル世代が音楽消費しない傾向は海外も同様で、スマホユーザーをターゲットにしたストリーミング・サブスクリプションサービスのチャレンジはサプライチェーンの再構築の一環ですし、レコードストアデイズのような地道なアクションからアナログレコード販売・生産量が増加したりと、新規ユーザー獲得の実績が出ている状況ですが、国内では遅れつつもそういう流れになってきてはいます。それらは音楽をとりわけミレニアル世代へ届ける道筋を模索していると言えるものでしょう。あくまでもその結果としてオーディオ市場の充実があるのではないでしょうか。



 *2019/12/1 「オーディオ・CD不況とミレニアム世代との関係」より改題。

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