初めてPCを家に入れたのは確か1995年頃でした。大学ではDOS/V、会社ではNECのPCが主流だった当時、エプソンがはじめて家庭向けPC通販サービスを始めた製品からEndevorシリーズを購入しました。ブラウン管モニタ、OSはWindows3.1、OSのインストールはフロッピーディスクでアプリケーションのワードと併せると数十枚分、使えるPCにするにはインストール作業が数時間がかりでした。
やがてOSがWindows95, 98とアップグレードする頃に今日の音声フォーマットMP3が登場します。当時のPCオーディオは読み込み専用CD-ROMドライブにマウントしたCDを1-2倍速で回しながらPC内の音楽プレーヤーで再生するという方式でうるさいCDプレーヤーといったもの。そのときに音楽プレーヤーWinampが流行の走りにありました。丁度この頃Apple Macintoshも一般に知られるようになります。
いまでこそPCオーディオはリッピングしたCDのLPCMをWAVをはじめとするコンテナ・フォーマットやダウンロード配信した音源で聴くスタイルですが、当時はPCオーディオという言葉すら存在しませんでしたが、PCでのCD-ROMドライブ再生がPCオーディオであり、MP3はマイクロソフトやソフトウェアメーカーが配布するパソコン用音源として明確に区別されていた記憶です。
なぜなら当時のPCスペックとしてのハードディスク・メモリの単位はキロ・メガバイト。やっとギガ時代の入口が遠くに見えていた頃で、テラはさらに夢の単位でしたのでパソコンにCDのWAVデータを音源として入れることが一般的ではなかった時代です。ですからMP3はイノベーティブなフォーマットとして当時受け入れられ、それがほんの20年前の筆者の周りのPCオーディオのリアルな世界です。
そこで、今回は現在の主要音声フォーマットの小史をざっと調べてみました。フォーマットは国内主要オーディオメーカーが対応するものとXLD変換コーデックです。
Format
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Year
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AIFF |
1991
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WAV |
1991
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ATRAC |
1993
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MP3 |
1996
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AAC |
1997
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WMA |
1999
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DSD |
1999
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FLAC |
2001
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OGG |
2002
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ALAC |
2004
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MQA |
2014
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*横軸はフォーマット、縦軸はおおまかなリリース起算年数です。AIFFはリリース日、DSDはSACDのリリース日を記しています
基本としては26年前の1991年、RIFF策定からAIFF(ビッグエンディアン)とWAV(リトルエンディアン)に派生し、次に非可逆圧縮そして可逆圧縮方式が開発されたという大きな流れでしょうか。主要フォーマットは少なくとも13年以上の歴史があることがわかります。そしてWAV, AIFFのリリースからおおよそ2-3年間隔で偶然にもフォーマットがリリースされています。ALACからMQAまで10年開いている点も特徴的でしょう。
また2000年前後は元祖ハイレゾ元年と言うべきか、DAD(SACD, DVD-Audio, MD)が相次いでリリースされています。さらにiTunes1.0がリリースされCDburn機能(CD-R)が付くなどCDスペック以上のフィジカルメディア、あるいはCDメディアの情報をコピーする機能の登場というイノベーションが行われた時代でもありそうです。
面白いのはやや遅れた時期にFLACやALACがリリースされているところでしょうか。FLACについては主としてWAVの容量を、ALACもAIFFのそれを圧縮する目的でのコーデックですが、MP3が登場した5年後にロスレス圧縮のスキームが始まっていますで、その頃にはPCスペックが向上し相対的に圧縮率を下げることで非圧縮に並ぶ可逆圧縮音声フォーマットが登場したと言えるのかもしれません。
あるいはCDがコピー可能となったりその後にAACの配信が始まりますが、その頃からDRM付きのフォーマットが登場します。先に挙げたDADはすべてDRM付きでしたし、Microsoft WindowsMeidaPlayerのWMA, Apple iTunesStoreのAAC, SonyのATRACは当時DRMの代表的なフォーマットでした。のちにWMA, AACのDRMは解除へ、SonyはATARCからWMAへシフトします。結果的にはユーザーからDRMは歓迎されませんでした。
時系列として可逆圧縮フォーマットの歴史の方が新しいのは意外でしたが、PCとCD再生との結びつき、ハードウェアスペックとフォーマットが相関にあることを伺い知れば、非可逆圧縮フォーマットが先んじてリリースされた背景が理解できるように思います。もちろんそれだけが理由ではなく、Appleがマーケティング戦略の一環としてALACを近年オープン化したようにフォーマットを個別にフォーカスすれば何か見えてくるものがあるでしょう。
たとえばOGG(Vorbis)はストリーミングのSpotifyが採用しているフォーマットでMP3, WMA, AACには及ばなかったものの、今や1億人以上のアクティブユーザーがいるとしているSpotifyの急成長と共に数字上のシェアは伸ばしていると見ることができます。既存のフォーマットでもイノベーティブな更新が続けられていればいつか利用価値が認められるポテンシャルがある一例でしょう。
であるならば、新しい音声フォーマットについてもデファクトスタンダードなフォーマットにはない利用価値が新たに創出されたときにオルタナティブになり得る可能性は否定できないはずで、これまで見てきた背景としての時期と価値が合致した場合においてフォーマットは活用される。そのトリガーは時代のニーズとイノベーションが揃ったときでしょうと至極ありきたりな結論に至るのでした。翻ってあの当時、MP3が20年も続くフォーマットになるなんて考えてもいませんでしたからね。
参照引用:Wikipedia
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Audio Interchange File Format(AIFF) This page was last edited on 8 September 2017, at 21:21.
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WAV This page was last edited on 7 November 2017, at 17:05.
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Adaptive Transform Acoustic Coding(ATRAC) This page was last edited on 21 October 2017, at 22:48.
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MP3 This page was last edited on 20 November 2017, at 08:12.
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Advanced Audio Coding(AAC) This page was last edited on 31 October 2017, at 22:27.
・
Windows Media Audio(WMA) This page was last edited on 18 September 2017, at 18:37.
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Direct Stream Digital(DSD) This page was last edited on 18 November 2017, at 14:35.
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FLAC This page was last edited on 6 November 2017, at 21:35.
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OGG (Vorbis) This page was last edited on 19 October 2017, at 08:55.
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Apple Lossless(ALAC) This page was last edited on 23 November 2017, at 15:50.
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MQA This page was last edited on 24 September 2017, at 15:20.
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High-resolution audio This page was last edited on 21 September 2017, at 04:38.
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iTunes This page was last edited on 10 November 2017, at 13:34.
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