1970年代は漫画がアニメへと展開した時代でした。漫画本や週刊少年ジャンプ、コロコロコミックなどマンガ雑誌のコンテンツがテレビで放映されたり映画化されたり、数多くのタイトルが動画として視覚化されました。また番組や映画の主題歌や挿入歌がヒットし、のちにアニメブームと言われる時代でした。
その時期には国内アニメだけでなく海外アニメも放映されており、ディズニーはもちろん「トムとジェリー」などもテレビで流され、SPレコードを蓄音機で回したかのような古きアメリカ映画音楽的なBGMが使用され、そのサウンドが当時はとても新鮮で今でも記憶に残っている印象深いものでした。
さて昨今は再びアニメブームだとか。そのトレンドに追いついていないのでムーブメントの中身はよくわかりませんが、音楽配信サイトでアニソンのタイトルをよく見かけます。そこで最近アニソンはどんな曲がヒットしているのか配信サイトでプレビューを聞きました。そして今回はその中から心に留まった音楽のレビュー的なコラムです。
セレクトした楽曲は
e-onkyo 年間シングルランキング - ANIME/GAME 、
mora 2018 年間ダウンロードランキング TOP100 にリストアップされている楽曲です。なお、今回は楽曲をモチーフに致しましたので、アニメ/ゲームの中身とは無関係な内容です。予めご承知おき下さい。
Ref:rain [Amier]
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Aimer (エメ) 2018年2月発売のシングル「Ref:rain/眩いばかり」の中の1トラック。フジテレビ”ノイタミナ”「恋は雨上がりのように」エンディングテーマです。作詞はaimerrhythm (Aimer)、作曲は飛内将大さん、編曲・プロデュースは玉井健二さん。玉井、飛内両氏は今をときめくヒットメーカー集団、音楽プロデュースチームagehasprings所属です。
ピアノから始まるイントロにAimerさんの繊細な声が乗ります。リフレインするA-Gのキーのフレーズが降り続く雨をイメージし、憂い気の雨のなか言葉を音に乗せて謳い続けるAimerさん。サビはシンプルな8ビートのリズムにC-D-Eのコード進行、そこにオーケストレーションが支える、いわゆるロックバラード。ナイーブなA-Bメロと心が強く叫び続けるサビの対比にグッときます。
最初に音楽を聞いて、続いて歌詞を読みました。淡く切ない恋心であることは間違いないのですが、歌詞の主語が曖昧であることからユニセックスな歌詞に読めました。その後、この記事を書くにあたりPVでその世界観を知り、普遍的なテーマ表現に心揺さぶられる感情がありました。ダブルAサイドの「眩いばかり」はシンガーソングライターのCoccoさんが楽曲提供しています。
遥かなる旅 [佐々木恵梨]
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佐々木恵梨 による2018年10月発売のアルバム「遥かなる旅」の中の1トラック。TVアニメ 「BAKUMATSU」 エンディングテーマです。作詞、作曲、編曲は佐々木恵梨さん。編曲まで行うとは只者ではない予感。公式サイトのプロフィールを読むと、Sony Music Publishingの専属作家としてのキャリアがありました。
反復するピアノのメロディとドラムの3拍のリズムのイントロ。不思議なものでそれだけでも風土性をイメージします。そこに銅鑼のようなSE。佐々木さんの透明感ある声はキーが高く、低域のドラムのリズムとの間にピアノとストリングスが厚みある中域でサポートします。リズムの他に歌詞に古風なワードが入り、和の世界観を表現しています。
しかしよく聞くと和を超越し森羅万象を感じる、あるいは因数分解してみるとミニマルミュージックにも通じる抽象芸術の音楽性を連想いたしました。因みに、同シングルのカップリングの3曲(Fireworks、Part of Me、TIME AFTER TIME)は違う曲調で打ち込みあり、アコースティックあり、グルーブありと佐々木恵梨さんの音楽創作の幅を感じさせる作品です。
Binary Star [SawanoHiroyuki[nZk] ]
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SawanoHiroyuki[nZk] (サワノヒロユキ・ヌジーク)による2018年4月発売のシングル「Cage/Binary Star」の中の1トラック。TVアニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅」オープニングテーマです。作詞はBenjaminさん、mpiさん、作曲はHiroyuki Sawanoさん。SawanoHiroyuki[nZk]は作曲家・澤野弘之さんのプロジェクト名です。
エコーの効いたエレキギターとアコースティックギターをベースラインがサポートし、そこへストリングが浮かび上がるイントロ。音楽に惹き込まれていく感覚を感じます。ボーカルのUruさんの繊細な声にピアノが伴奏し、ソフトで耳当たりがいいAメロです。Bメロは一転し、Uruさんの力強い歌唱に変わります。
ドラムのビートにオーケストレーションがクロスし、サウンドステージが広く幻想的でエモーショナルな楽曲へと発展し、最後はコラースを交えてエンディングを迎える壮大なロックバラード。全編英語の歌詞ということと曲の構造で洋楽をも連想いたします。カップリング曲の「Cage」はお台場「実物大ユニコーンガンダム立像」のテーマソングです。
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数あるアニソン/ゲーム音楽の中から2018年リリースの3作品を選ばせて頂きました。記事を草稿中は6作品に絞り込みましたが、結果的にロックバラードの選曲になりました。3作品はプレビューを聴いただけで迷いなくスーッと心に入ってきた楽曲ばかりです。しかもc/wの楽曲も甲乙つけがたくセレクトに迷いました。
複数の楽曲から絞り込む過程では、アニメのストーリーやキャラクターを意識して楽曲制作を試行錯誤している歌手や制作者の存在を知り、感心いたしました。こういう点にアニメカルチャーがファンを惹きつけ続ける理由があり、制作側とファンとが一緒にアニメ産業を支えているのだろうと感じた次第です。
数十曲をプレビューで聴いた印象としては、一口にアニソンと言っても音楽性が多様だということです。なかでも16ビートのハードロックやボーカルをフューチャーしたJPopが目立ちました。そう言えばテーンエイジャーの頃、同じように活発な音楽を志向していた事を回想しました。一方で音圧が高めの傾向は、やや気がかりでもあります。
今回の選曲した理由ですが、勿論、理屈は多少ありますし嗜好性もさることながら、心の底から湧き上がる情感、感動を得ました。この要素は普遍性と言い換えることができると考えていますが「Ref:rain」「遥かなる旅」「Binary Star」の3作品には音楽のジャンルを超えた普遍性があったと考える、あるいは筆者がそれを感じたということです。
筆者はまだアニソンのほんのひと握りしか知りませんし、アニソンという棚に陳列していたが故に今まで作品に出会いませんでした。逆に言えば、アニソンの棚を覗いたからこそ楽曲に出会えたということです。実は聞き込んでいるうちにアーティスト達を気になり出していることに気づきました。そしていつの間にかファンになっていました。
たとえばオーディオ好きな音楽ファンの多くは、音楽ジャンルの意味も音楽の持つ普遍的価値もきっと理解しているはず。ですから、楽曲の良さを伝えることが音楽とオーディオと人とを繋げることだと、私はそう信じています。
参照引用:Wikipedia
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Ref:rain/眩いばかり 最終更新 2018年11月5日 (月) 03:52
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澤野弘之 最終更新 2018年12月23日 (日) 15:51
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