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レビュー Mytek Brooklyn DAC+ Part5 デジタル接続編

今回はBrooklyn DAC+と他機器とのデジタル接続を中心にレビュー致します。

 Brooklyn DAC+の豊富なデジタル入力端子はさまざまな機器との接続を可能にします。同じBrooklynのマルチをはじめ、A/D D/Aコンバータ、マスタークロックジェネレータ、レコーダー、エフェクター、ディスクプレーヤー、トランスポーター等。なかでもMQAデコードの可否については関心事の一つですので、MQA-CDをディスクプレーヤーで再生、MQA DACのデコードを検証いたします。

 ディスクプレーヤーはSONY BDZ-EW1100、2013年末発売の一般的なブルーレイレコーダーです。BDZ-EW1100のデジタル音声出力端子(光)を光デジタルケーブル(TOSLINK)でBrooklyn DAC+のデジタル入力端子(光)に接続し、各種フィジカルメディアを再生いたします。光デジタルケーブルはHOSA OPM303、ADAT, S/PDIF対応の普及価格帯のオプティカルケーブルです。


 フィジカルメディアをディスクトレーに挿入、再生するとレコーダーの前面パネルとテレビ画面にプレイ表示、Brooklyn DAC+の前面パネルには解像度が表示されました。メディアとデコードの可否は以下の結果となりました。




 左上:CD、中央:SACD(CD層は非MQA)、右上:MQA-CD
 左下:SACD(CD層はMQA)、右下:Blu-ray Audio

・CD、SACD(CD層は非MQA):16bit/44.1kHz  ・MQA-CD、SACD(CD層はMQA):24bit/176.4kHz、24bit/352.8kHz  ・Blu-ray Audio:16bit/48kHz


 デジタル著作権管理(DRM)されているBlu-ray AudioとSACDの場合、デジタル出力は通常ダウンコンバートされます。MQA-CDの場合はブルーレイレコーダーの光出力を通してBrooklyn DAC+でMQAデコードが確認できました。MQAの解像度はマスター音源のオリジナルレゾリューションにより異なっています。2L「FURATUS」はmShuttle機能を利用すればMQAデータファイルをPCに取り込める仕様で、今回は一事例としてご紹介しています。(*1)



クローズアップ



 Brooklyn DAC+とMan…

コラム MQAコーデックをなぜ選ぶのか?



 以前、”コラム MQA技術解説についての私的メモ・ロスレスかロッシーか? ”と題する投稿を致しました。この投稿にはいまだにコンスタントにアクセスがあることから、潜在的なMQA関心層をイメージいたします。そこで今回はMQAについての巷の関心事を少しアングルを変えて「MQAコーデックをなぜ選ぶのか?」という観点で、私的な見解・考察をまとめました。


 

 大きな四角形への誤解


図1 典型的なDSD64(=2.8MHz=SACD)の周波数スペクトル (192kHz sampling)

 縦x横で表されるスペクトル、単位は振幅(amplitude)dB x 周波数(Frequency)Hz。オーディオ分野ではCD(16bit/44.1kHz)、DSD(1bit/22.5MHz)と縦軸1-32bit、横軸44.1kHz-22.5MHzが一般的に目にする数字です。我々はこの数字が歳月と比例し、やがてPCMのサンプリング周波数がMHzオーダーとなり、64bitで録音される日が来るかもしれないと漠然と考えています。

 オーディオメディアはしばしば、振幅x周波数のより大きな四角形がより良い音だとして、なかにはハイビット・ハイレートのノイズは音を良くする要素だとして、さらにはノイズは空間把握に影響があるとして、よりハイビット・ハイレートな性能を持つオーディオ機器や音源のコマーシャル・プロモーションに用い、我々はそれを信じ込んでいます。本当にそうでなのでしょうか。

 図1は一般的なDSD64(=2.8MHz=SACD)のFFTです。可聴帯域にも含まれるバックグラウンドノイズをノイズシェーピング、ローパスフィルタ(=ハイカットフィルタ)を通した後のピーク波形ですが、高調波ノイズで占められています。この高調波ノイズはPDM(パルス密度変調)方式の副産物、不要ゆにえ可聴帯域外に移したはずです。つまり大きな四角形の中にはリスナーが聴くことのないノイズが多分に含まれています。

 ハイビット・ハイレートがより良い音に影響があるとしても、オーディオメディアが謳う音を良くする要素としてのノイズの大部分はシェーピングしフィルタリングされていますので、良い音との直接的な因果関係はもはやありません。言い換えれば、振幅x周波数の四角形の解説にDSD生成に不可避なノイズも紛れ込ませて、文脈上いかにもノイズで音が良くなると意図的に誤解させています。

 振幅x周波数の四角形の面積で示されるものはデータレートです。



 ロッシーなコーデックの意義


 データレートはハイビット・ハイレートで大きくなります。CDは16bit/44.1kHzのステレオ2ch、ビットレートは 44,100 x 16 x 2 = 1,411,200 bit/s = 1.4Mbps で表されます。24bit/192kHzは9.2Mbps、24bit/384kHzは18.4Mbps、1bit/22.5MHzは45Mbpsになる計算です。我が家のメタル回線とWiFi(11ac)環境でのMacbookPro(11n)のデータ転送レートの実効値はUp:35Mbps、Down:65Mbps程度です。

 SpeedTest Indexの調査による2018年夏の日本のネットスピードでは、Fixed Broadband Up:90.21Mbps、Down:81.47Mbps、Mobile Up:8.39Mbps、Down :24.99Mbpsとされています。またNetflix(The Netflix ISP Speed Index)によると、2018年夏の日本のISPスピードインデックスはHigh:3.95Mbps、Low:1.98Mbps、Avg:3.02Mbpsとされており、より保守的な数値となっています。

 つまり保守的な数値では、現在ハイレゾで一般的になりつつある24bit/192kHzのレゾリューションの転送レートでもやや厳しい数字になります。モバイルに至ってはさらに数字が下がりますので、映像・音楽系のストリーミング・サブスクリプションサービス・プロバイダがスマホユーザーを想定し、より安全圏にある低いビットレートを有するロッシー(非可逆圧縮)なコーデックを採用する理由を見つけることができます。

 またデータレートはストレージ容量も圧迫します。HDDは4TB時代ですが、ノートPCやモバイル・スマホ向けのフラッシュストレージではそうもいきません。32GB、64GBの容量を持つスマホに1曲1GBの音楽データを入れることは極めて稀で常識的ではありません。したがってロッシーなコーデックの需要は依然としてストレージ容量の観点にもある。つまり、ネットワークインフラとモバイルのハードウェアスペックのベースが向上しない限り、ロッシーコーデックの意義はまだあると考えます。


 

 デファクトスタンダードなCDスペック


図2 主要な音楽フォーマット・コーデックのリリース年月

 ロッシーなコーデックはMP3の成り立ちがそうであるように、CDから生成される無圧縮ファイル(WAV, AIFF)のデータレートを圧縮することが主な目的でした。CDから質を落としより軽いデータレートにするか、もしくはCD並のビットレートに近づけるか。近年は後者の目的でスペック上は96kHzをサポートするAAC、192kHzをサポートするLDACなどが存在していますが、圧縮プロセスでCDのビットレートを削減する点は共通です。(*1)

 また無圧縮ファイル(WAV, AIFF)の音質を損なうことなく圧縮させることができるロスレス(可逆圧縮)なコーデックのFLAC・ALACは、CDスペック以上のハイレゾをコンテナできることからパーソナルユーザーのCD・ハイレゾデータファイルの圧縮や先述のサブスクリプションサービスのストリーミングにも利用されていますが、圧縮率がロッシーほどには至らず30-50%に留まっています。

 フィジカルメディアで圧倒的なシェアを有しているCDを軸にして、その音質を損なうが圧縮率が高いロッシーと音質は損なわないが圧縮率が低いロスレス。デジタル音源はデータレートとストレージに密接に関係しながら、大きな2つの潮流に分かれていると言えると思われます。なぜCDが基準なのか?一つにはレコードに代わり長年CDが音楽メディアの主流として普及してきたこと。

 もう一つにはCDのナイキスト周波数22.05kHzが人間の可聴限界と言われる20kHzをカバーしているとの言われです。後者については、急峻なデジタルフィルタを適用することでリンギングが発生することから、DAC処理の段階でオーバーサンプリングしデジタル/アナログ変換することがCDプレーヤーの音質・機能性の面で追究されてきましたが、ハイビット・ハイレートでサンプリングされるハイレゾ時代においては昔話の域になりつつあります。

 しかしフィジカルメディアの市場に限ればCDのシェアは圧倒的です。(*2)




 大きな四角形の中の三角形







 そういう背景でMQAは、最大24bit/768kHzのハイビット・ハイレートなデータレートを24bit/48kHzまで折りたたむ点がユニークです。音楽信号が持つ平均的な周波数は図3のように三角形の分布をしており、三角形は音楽的に関連する信号(残りはノイズと静寂)を囲み、全体のコーディングスペース面積の約1/6、つまりデータレートの5/6が浪費されているという考え方がMQAにはあるようです。(*3)

 そこでMQAは複合的なサンプリング手法とデータレート削減、カプセル化、ロスレス圧縮などを組み合わせ、最大768kHzは1/16の48kHzまで、352.8kHzは1/8の44.1kHzまで折りたたみ、結果的にはビットレートが1-1.4Mbpsまで圧縮されます。振幅x周波数の四角形の面積は既成概念で考えると非常に大きなサイズですが、音楽的に関連する信号(検知できるノイズも含む)に限れば思いのほか小さくなるようです。

 そこで24bit/352.8kHzのMQAエンコードファイルはCDやSACDのCD層へパッケージされることも可能となり(*4)しかもMQAのビットレートはCDスペックを基準としている先述のロスレスやロッシーなコーデックと共通していながら、ハイレゾマスターと同じオリジナルレゾリューションを持つという点において、既存のロスレス・ロッシーなコーデックとの大きな違いがあります。



 ロッシー?ハイレゾ?MQAコーデック



図4 ロスレス・ロッシー、MQAコーデック、CD、ハイレゾの周波数分布イメージ

 MQAはマスター音源の音質を損なわずにロッシー圧縮しリスナーに届けるプロセスとも言えます。ではなぜマスター音源をリリースしないのか?それはネット時代にデジタルコンテンツは脆弱だからです。デジタルコンテンツが一度コピー・共有されればアーティスト・スタジオ・レーベルは不利益を被ります。また一方でデジタル著作権管理(DRM)はユーザーには受け入れられません。(*5)

 その代わり、MQAはスタジオ品質と認証された音源をCDサイズまで抑え、後方互換性を有しすべてのDACで音を聞くことができます。デコーダを通せばさらに音質は向上しハイレゾのメリットを享受できます。オリジナルレゾリューションであることはアップサンプリングを、CDサイズはダウンコンバートをユーザー側で行う必要性を無くします。PCに取り込む際には既存のFLAC・ALACでロスレス圧縮しよりコンパクトに保存できます。

 今までのロッシーなコーデックはCDを、ロスレスなコーデックはハイレゾをも上限に捉えていましたが、MQAは上限はロスレスと同様にハイレゾなおかつオリジナルレゾリューン、下限はロッシーの上限のCDという点で今までに無いコーデックです。しかも圧縮率が1/10でありながらCDの音質を損なうことがない点で既存のロッシーなコーデックとは一線を画しています。またオリジナルレゾリューションを含むデコーダで展開した際にハイレゾと比べても音質に遜色が無い(*6)という点も特筆です。

 つまり、既存のCDメディアとしても、ハイレゾな音源としてもMQAは有用であるということです。

 MQAコーデックを選ぶ理由
・効率的で高い圧縮率
・CDと同等のサイズと音質を担保
・ハイレゾの音質と遜色がない
・マスター音源と同じオリジナルレゾリューション
したがって、筆者のリスニングに関してMQAのロッシー性はほとんど影響がありません。



(*1) 他には以前拙稿で取り上げたXIVERO社の圧縮ソフトもありますが、圧縮率という点でもMQAを上回るには至っていません。
(*2) 一般社団法人 日本レコード協会 日本のレコード産業 2018年度版より
(*3) 拙稿:コラム MQA技術解説についての私的メモ・ロスレスかロッシーか?より
(*4) MQA-CD 24bit/352.8kHzの音声信号のベースバンド以上の追加データはCDのノイズフロア下に符号化されます。
(*5) 拙稿:コラム 音楽メディアとフォーマット・MQA Part13 Stereophile 文脈によるMQA解説より
(*6) カナダ・モントリオールのマギル大学の研究調査でMQAエンコードファイルと24bit/96kHzファイルとでは”明瞭さ”で区別がつかないというブラインドテスト研究論文から。



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