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   2018.10.27 レビュー クラウディオ・クルス & ブルーノ=レオナルド・ゲルバー
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Mischievous mouse [music review]

大江千里による2017年1月発売のアルバム「Answer July」からの1トラック。アルバムアートはNishinoさん(キングコング)による精巧なイラストレーション。モチーフは大江さんらのバンドでしょうか。世界盤・ヴァイナル盤以外の通常盤はNishinoさんのイラストが入ったアートフレームを大江さんが抱えているショットとなっています。

 レーベルはVillage MusicThink! RecordsPND Records。ミキシング・マスタリングエンジニアはOscar Zambrano氏、アナログ盤の企画・監修は塙耕記氏。全てのトラックの作曲は大江千里さん、作詞はJon Hendricksさん、Lauren Kinhanさん、Becca Stevensさんがクレジットされています。大江さんのセルフプロデュース作品です。







 Mischievous mouse、訳すれば”お茶目なネズミ”。作詞はJon Hendricksさん、ジャズ界のレジェンド。ボーカルはSheila Jordanさん、言わずと知れたビッグネーム。このトラックを含む作詞と同様にLauren Kinhanさん、Theo Bleckmannさん、Becca Stevensさんが参加し、ジャズボーカルをフューチャーした作品となっています。

 Fメジャースケールでバンドが弾ける印象的な8小節のイントロダクション。ベースラインにピアノが乗り、シーラさんが歌い始めます。何やらおとぎ話を聞くときのような可愛らしい歌唱。verseからbridgeにかけての韻を踏んだ歌詞に引き込まれ、身体が音に合せリズムを刻みます。chorusはバンドメンバーによるバッキングボーカルが加わり、思わず楽しく歌い出します。

 歌詞に記述のないシーラさんの歌唱パートにはネズミが踊り出す理由が語られています。要約すると、バースデーケーキを用意した家主の足下にネズミが踊りながら現れ、同じ日、同じ月、同じ年の誕生日を祝いに来たと告げます。日付は1928年11月18日...。そのシーンをイメージしながら楽曲を聞くと、何とも微笑ましくコミカルで洒落っ気のある楽曲に感じます。シーラさんのアドリブが小粋さに輪をかけます。




 大江さんのYouTubeチャンネルではシーラ・ジョーダンさんらのインタビューがご覧いただけます。

 演奏者はJim Rob…

レビュー Mytek Brooklyn DAC+ Part1 リスニング編


 Mytek Digital社(以降、Mytek)の製品は過去に一度購入を検討したことがあります。24bit/96kHzのフォーマットを処理するDAコンバータが手の届く価格帯で出始めた2009年頃です。比較機種のメーカーはLavry Engineering社, Benchmark Media Systems社...。中でも当時からインターフェースやフォーマットを積極的に取り入れるMytekの先取性は以後、DSDが提唱された際の対応も早いものでした。

 そしてこのたび、米ニューヨーク・ブルックリンに本社を構えるMytekは、MQAにいち早く対応したメーカーの一つに数えられるようになりました。その他のメーカーとしてはMQAを開発したボブ・スチュアート氏が創業したMeridian Audio社、カナダのNAD社・Bluesoundグループ。いずれもハードウェアのみならずソフトウェア・エンジニアリングにおいても技術力の高さが現在評価されているメーカーです。

 さて、Mytekのカタログリストには最新機種であるManhattan DACⅡ, Brooklyn DAC+, Liberty DAC、そしてStereo192-DSD DACがラインナップされています。Stereo192-DSD DACは2012年に国内リリースされた機種でDAC市場にセンセーションを起こしたESS Technology社のSaber DACチップを実装したことがトピックスとなったことは記憶に新しいところです。

 そのStereo192-DSD DACの進化系としてDXD, MQAに対応し、本社の地名を冠したBrooklyn DACがリリースされた頃からD/Aコンバータの検討を始め、Brooklyn DAC+としてブラッシュアップした機会に導入いたしました。Brooklynからの改良点は以下のようにD/A以降のアナログ段の強化が挙げらてれいます。DAC+でなくても十分高音質という巷のレビューがありますが、Brooklynが一応リプレイスされた形のようです。
 
・Sabre ES9028PRO (旧モデルは9018)
・アナログボリューム回路
・アナログ入力
・フォノステージ
・ヘッドフォンアンプ
・デュアルモノアナログ回路

 先ず外観ですが、BrooklynからMytek製品のイメージを刷新するエレガントなフロントフェイスパネル。凸凹のテクスチャには惹かれますが、右に大きなロータリーノブ、中央に視認性の高いカラーディスプレイ、左右にコントロールスイッチ、左にヘッドフォンアウトとファンクション関係がミニマルにレイアウトされています。後述しますが、このパネルは機能的に優れています。



 トップパネルはマットグレー配色のシャーシにBrooklyn DAC+の文字、Mytekの頭文字Mを象った放熱穴はボトムプレートにも設けられています。Manhattanで採用されているフロントと同じデザインのサイドパネルは省略されていますが、Brooklyn ADCなど同じハーフラックサイズのギアを横に設置するプロユースを想定すれば合理的なコストダウンと考えます。



リアパネルは左からXLRバランスアウト、RCAアナログアウト、RCAアナログイン(フォノ入力兼用)、AESデジタルイン、S/PDIFイン(DSD入力兼用)、ワードクロックイン/アウト、USBイン(アウト兼用)、OPTICALイン、フォノグラウンド、12V DC(外部電源用)、電源入力コネクタが配置されています。リアからはハーフラックサイズながら多機能であることが伝わってきます。電源はスイッチング電源です。




 必要な配線を行なった後、マニュアルに沿い先ずはMytek公式ウェブサイトからUSBドライバ(Macは不要)、MytekControlPanelをダウンロード、ユニットを最新のファームウェアへとアップデートいたします。フロントパネルのM文字が点滅しユニットがリブートすれば最新のサービスです。設定は全てPCのMytekControlPanelから調節できます。またDAC+のフロントパネルのフィジカルスイッチからも同様の設定が可能です。




 DAC+のフロントパネルディスプレイの左右に配置された各2つのファンクションボタンで詳細設定メニューを指定できます。右のロータリーノブは長押しすると電源スタンバイ、メニューを変更する場合は左右に回転、プッシュすると設定をON/OFFすることになります。この機能は同様のディスプレイとフィジカルスイッチを持つ他社のギアよりも合理的にできており、かなり使いやすいと感じました。

 またBrooklynからの変更点として、プロユースのギアということで出力ゲインが高めに設定されていますが、ゲイン調整の際にシャーシを開けて基板のディップスイッチを変更する必要があったものを、DAC+ではファームウェア1.21からコントロールパネルのトリム設定でゲイン調整を行うようになりました。プリアンプモードだけでなくBypassモードでゲインが高い場合にも32bitデジタルボリュームでトリム調整することになります。

 そしてDAC+はMQAデコードを有効にした場合の最小位相フィルタの他、DSDフィルタ、7種類のプリセットPCMフィルタを設定できます。MQAデコードを有効にした場合、ミニマムフェーズフィルタに設定され他のフィルターは適用されません。

・MQA (MQAデコーダ有効の場合、ミニマムフェーズ)
・DSD (Low, Medium, High)
・BRCK (ブリックウォール)
・HBRD (ハイブリッド、ファーストロールオフ・ミニマムフェーズ)
・APDZ (アポダイジング、ファーストロールオフ・リニアフェーズ)
・SRLP(スローロールオフ・リニアフェーズ)
・FRLP (ファーストロールオフ・リニアフェーズ)
・SRMP (スローロールオフ・ミニマムフェーズ)
・FRMP (ファーストロールオフ・ミニマムフェーズ)
 
 
 現行のMytek製品はMQAデコード対応DACとしての訴求力や関心が高い製品ですので、MQAデコードを中心にPCM, DSD音源再生を通して音の視聴と測定で評価を行い、併せて他機能で特筆すべき点をご紹介して参りたいと思います。






 テスト環境:
 Storage: Macmini
 Software Player: Audirvana Plus 3
 DAC: Mytek Brooklyn DAC+, Meridian Explorer2
 ADC: Apogee Element24
   Analyze: MacbookPro, MusicScope, Audacity
 Amplifier: Accuphase E-360
 Speakers: Brodmann F2
 Headphone: AKG K240MK2
 Cable: AudioTechnica AT561A, Mogami 2497
 
 Audirvana Plusの主要設定:
 MQA Decoder Device
 DSD over PCM standard1.1
 Exclusive access mode
 Use CoreAudio I/O buffer
 Integer mode
 Sample Rate Converter: Apple CoreAudio

 テスト内容:
 1. スピーカーとヘッドホンによるリスニング
 2. Brooklyn DAC+ 測定




 テスト音源は2LのTest BenchからMAGNIFICAT - Nidarosdomens jentekor & TrondheimSolistene ノルウェーの教会で収録された非常に美しい賛美歌です。主旋律を歌う女性とその背後に弦楽団とコーラス隊、指揮者の背後にピアノとオルガンが位置し、声や楽器の発する音のニュアンスや空間に広がる音の響きが特徴的な楽曲です。

 今回は16bit/44.1kHz, 24bit/96kHz, 24bit/192kHz, 24bit/352.8kHz, DSD64, DSD128, DSD256, MQA(24bit/352.8kHz)データを用います。PCMはFLACをXLDでALAC形式に変換、DSDはDSF形式です。DSD再生はDoPでDSD128まで、DSD256はPCM変換したものを視聴します。

 測定用音源は1KHzと11.025kHzのテスト用信号を用います。Element24はスペック上限24bit/192kHzなので測定時の解像度は24bit/192kHzとします。






 リスニング

 16bit/44.1kHzから順にスピーカー再生します。24bit/96kHzではテクスチャに滑らかさが感じられ、空気感が変わりパースペクティブを意識します。24bit/192kHzでは緻密なテクスチャが増し、重心が下がり奥行きが出て音の分離と空間的なエコーを意識し、音にまとまりが出ます。24bit/352.8kHzでは定位がよりはっきりとわかり、音に空気感を伴う緻密さがあり、明るく音に包まれるうような広がりが出ます。
 
 続いてDSD64は24bit/96kHzに空気感が近く、テクスチャは24bit/192kHzと並び、パースペクティブは上下が狭く感じます。DSD128はパースペクティブが上下に広がり奥行きを感じます。緻密なテクスチャは24bit/192kHzを上回ります。DSD256(PCM変換)はパースペクティブがさらに左右に広がり24bit/352.8kHzに近づき、空間感を伴う緻密さとしっとりしたテクスチャがあります。

 MQA(24bit/352.8kHz)は24bit/352.8kHzと同様に明るく広いパースペクティブを感じますが、空気感を伴う緻密なテクスチャと音の分離が良く、声や楽器の重なりがよくわかります。サウンドバランスの点で24bit/352.8kHzが上から下まで前に出る感じですがMQAは低域が若干タイトです。ヘッドフォンに切り替えるとMQAのディテール表現が際立ちます。
 
 16bit/44.1kHzから順に上げていくと24bit/352.8kHz、DSD256(PCM変換)、MQAの音は近接した音に感じられました。さらに聞き込めばそれぞれの特徴や良さが感じられ、いずれも緻密でニュートラルなサウンド傾向です。他にESS Technology社のDACチップを搭載したギアを所有していますが、音のキャラクターが全く異なります。これがMytekの音作りと言えるのかもしれません。

 以前Meridian Explorer2のレビューを行いましたが、DAC+のMQAの音もExplorer2のそれと大きく外れることはありません。付帯音が少なく明瞭さがありナチュラルという印象を改めて持ちました。しかしユニットの設計が異なりますので、やはり個性はそれぞれにあります。2Lのテスト音源はとても心地よく広がりを感じる音でした。DAC+は高精細でドライブ力があるためフロアスピーカーから低域がスムーズに出ています。インストールしたオーディオシステムにフィットしていると言えそうです。



レビュー Mytek Brooklyn DAC+ Part1 リスニング編
レビュー Mytek Brooklyn DAC+ Part2 測定編
レビュー Mytek Brooklyn DAC+ Part3 プリアンプ編
レビュー Mytek Brooklyn DAC+ Part4 フォノイコライザー編
レビュー Mytek Brooklyn DAC+ Part4 デジタル接続編
 


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