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レビュー 大植英次 & 大阪フィル 大阪クラシック2018

大阪市中央公会堂 (以後、中之島公会堂)で行われた「大阪クラシック2018 第一公演 大植英次 & 大阪フィル」へ行って参りました。豪雨、台風の次は北海道で大規模な地震が生じ、列島に相次いで起きる天変地異。こんなときこそできれば少しでもリフレッシュを図りたいものですが、大阪クラシック初日はあいにく今にも雨が降り出しそうな曇り空。 

 メイン会場となる中之島公会堂には開演20分前に到着いたしました。公会堂周辺は普段ビジネス街であり美術館・博物館が並ぶ教養文化ゾーンですが、当時は休日と天気もありジョガーと観光客がちらほらと散見されました。しかし既に広場前には入場待ちの長い行列ができており、その列に加わり会場入りします。



 会場は大集会室。装飾を施したシューボックス型のホール。赤い敷物の指揮台と手前に大きくせり出しているステージが目に留まります。座席は2階右側後方。開演直前、真っ白なロングのタキシードを纏った大植英次さんがステージに現れ、マイクを手に取り大阪クラシック 2018の開会宣言を行います。そして大阪市長を招き語らいのあいだに大阪フィルハーモニー交響楽団の皆さんが着座します。





 演目は
・バーンスタイン:キャンディード「序曲」
・ドビュッシー・牧神の午後への前奏曲
・バーンスタイン:キャンディード「組曲」





 プログラムは大植英次さんの師である故レナード・バーンスタイン生誕100周年、それからクロード・ドビュッシー没後100年であることから選曲したと大植さんが自ら解説します。ちなみに中之島公会堂 開館100周年ということもあり、100年が3つ並ぶ記念すべきイベントでした。プログラムは彼のリリース作品「Bernstein」「Reveries」から聴くことができます。

 バーンスタイン:キャンディード「序曲」。大編成オーケストラによるスケールの大きな楽曲、そして華やかで都会的な艶を感じる作品ですが、中之島公会堂のステージにフィットした大阪フィルハーモニー交響楽団の中編成の布陣は、歯切れ良く、軽やかで、気品ある鮮烈な音。4分超の比較的短めの作品ですが、幕を開けた大阪クラシックのファンファーレとしても相応しい作品。

 ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲。大植さんが正午から演奏を開始したいと述べ、数秒後に時計の針が正午を刻んだとき演奏が始まる細やかな演出。フルー…

コラム SACDの現状と未来



 アメリカ・RIAAが2017年のアニュアルレポートをリリースしました。3年連続で音楽収入が増加しています。ドイツ・BVMIもレポートをリリースしていますが、こちらはわずかに減少。そして日本レコード協会(RIAJ)もレポートを発表しており、3年連続で減少です。下図1はソフト総生産の比較です。マーケットの大きさに違いはありますが、傾向が鮮明に現れています。

図1 音楽ソフト総生産比較 (RIAA, RIAJ, BVMIの統計から独自に集計)


図2 内訳 (RIAA, RIAJ, BVMIの統計から独自に集計)

 上図2は音楽ソフトの内訳です。日本とドイツのフィジカルのシェアが大きいところ、アメリカはデジタルサブスクリプション&ストリーミングが大きく伸ばしています。ただ日本・ドイツもストリーミングが増加傾向にあり、ドイツは35%、日本は9%。ドイツではデジタルがシェアを広げつつ50%に迫りフィジカルと拮抗しています。(アメリカの音楽ビデオはストリーミングに移行しています)


図3 音楽ソフトのうち、オーディオレコードの過去10年間生産推移 (RIAJ統計から独自に集計)

 では国内フィジカルメディアの内訳はどうでしょうか。過去10年間の「CDアルバム」「アナログ」「その他(SACD, DVDオーディオ, DVDミュージック, MDの合計)」の生産数量と金額をそれぞれ別表にしています。数量ベースでは「CDアルバム」と「その他」が減少し「アナログ」が増加、金額ベースではやはり「アナログ」が増加し「CDアルバム」は約半分で「その他」は微増微減を繰り返しています。

 
図4 オーディオレコードの過去10年間生産推移 (RIAJ統計から独自に集計)

  数字の上がり下がりだけ見ると「CDアルバム」が減少著しいところですが、3属性を数量・金額共にグラフ化してみると上図4になります。「CDアルバム」の生産数に比べ「アナログ」と「その他」は桁が違いますので、後者の2属性はグラフに現れず視覚化に苦労します。


図5 オーディオレコードの過去10年間生産推移 別表 (RIAJ統計から独自に集計)

 そこで上図5は「その他」と「アナログ」の推移をクローズアップしています。「CDアルバム」の目盛は縦軸左、「その他」と「アナログ」は縦軸右です。「その他」が増減を繰り返しているところで「アナログ」が3年連続で急増し、「その他」を抜き倍以上の生産数に上昇しています。折れ線グラフは移動平均を表しています。


図6 2016-17 音楽ソフト総生産 オーディオレコード (RIAJ統計から独自に集計)

 先述の数字はオーディオレコードにおける3属性の数字でしたが、図6では2016年度と2017年度のオーディオレコード全体に占める残りの各属性を含めた数字を金額ベースで表示しています。わかりにくいので下図で視覚化しています。


図7 2016-17 音楽ソフト総生産 オーディオレコード内訳 (RIAJ統計から独自に集計)

 図7「12cmCDアルバム」が7割半を占めています。次いで「12cmCDシングル」。小数点切り捨てやグラフ化による数字の誤差がありますが、概ね「12cmCDアルバム」と「12cmシングル」で9割を占めています。




図8 2017 フィジカルメディアの内訳 (RIAA, BVMI統計から独自に集計)

 図8はRIAA、BVMIのフィジカルメディアの内訳です。図7と同様にCDアルバムが7-8割、次いでLP、音楽ビデオ。アメリカの「アナログ」のシェアが大きいのは特徴的です。Other Physical(その他)、Single physisch(シングル)は統計の属性構成でRIAJと違いがありますが、CDシングルとVinylシングル、SACD, DVD-Audioは1%かそれ未満という数字は3団体のデータ共通です。

 さて、これら数字をどう見るか。図3-5を見れば「CDアルバム」の減少は続いているがやや鈍化し、「その他」は底堅く、「アナログ」はシェアが少しづつ成長していると言えるかもしれません。他方で、図6-8を見ればフィジカルは「CDアルバム」が主流、「アナログ」は日本とドイツは全盛期と比べればまだ数字が付いてきておらず、アメリカでは成長分野と見ることができるでしょう。

 そして「その他」にカウントされているSACDは現時点においてもマーケット規模が小さいニッチ市場であることが3団体のデータで鮮明に現れていると言えます。「CDアルバム」が70%超の中で「その他」を構成するCD層のあるハイブリッドSACDが低迷しているということは、シンプルに考えればマジョリティがSACDに魅力かメリットか存在を感じていない表れとみることができるでしょう。


 以上のように、SACDがニッチ市場にあることは疑う余地がありません。しかしフォーマットとして見たときに果たしてニッチなのか。先述の3団体のレポートにある「ダウンロード」項目にDSDフォーマットが含まれていないとは言い切れず、DSD自体の需要は少なからずあるものと推察できます。しかしご披露できるデータが揃っていません。

 そのDSDはDRM付きのSACD(1bit/2.8MHz)を販売しながら、同じDSD(1bit/2.8MHz)をnon-DRMでダウンロード配信し、なぜ同じ音源フォーマットなのにメディアの違いでDRMの可否があるのか、矛盾を抱えています。この矛盾はマーケティング戦略の失敗を体現していると思えてなりません。

 SACDは1999年にリリースされ約20年。そしてDSDに関わるオーディオ業界が彼らの言う理想的なコンセプトを抽象的に改めて表明したのが2011年頃。このタイミングでSACDとDSDの矛盾を解消するための議論をすべきだったのかもしれません。あるいはサウンド以外のメリットを提案すべきだったのかもしれません。しかし何も起こさなかった。これが答えなのかもしれません。

 近頃、SACDのリリースは限定盤であることが多く、需要予測から生産を抑え在庫を持たない売り方は容易に想像できます。市場規模が小さいのに見込めない供給を行っても製品は余剰するだけですから、小ロットで売り切りリスクを回避する行動は市場原理から合理的です。しかもシングルレイヤーSACDを販売しニッチ市場でターゲットをさらに絞り売り込んでいます。

 未来を確実に予測することは困難ですが、過去のデータと現状から少し先のことを考えることは不可能ではありません。ニッチ市場だったアナログには復調の兆しが見え、残念ながらSACDには見えていません。規格を策定した企業のグループレーベルは既に他のフォーマットのサポートを始めました。SACDはアナログのように再び見直される時期を信じて待っているのでしょうか。

 確かに”いつか見直される時期が来るかもしれない”という思いは否定できません。アナログの先例があるからです。しかしアナログやCDアルバムは20年以上に渡り毎年1万タイトル以上のディスクを生産し続け、市場には相当数のディスクが浸透しています。アナログ低迷時代に中古市場が支えていたとは常識です。ですから復活するベースがあったわけで、それがSACDに当てはまるのかどうか。

 そもそもSACD/DSDは誰のための何のためのメディアとフォーマットなのか。他のメディアやフォーマットとの違いを謳うために他を感情的に批判的に論じることに大きな意味があるのかどうか。やや矛先が違うように思います。少なくともデータを見ると、自省的に再考することがSACDにこそ必要なのではないでしょうか。そう思いますが、いかがでしょうか。




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コメント

  1. SACDとDVD-AUDIOは、共にコピーされない安全なメディア(DRM)ということでアーティスト側にアプローチしてきてハードウェア的にもそうしてきたという経緯があります。違法コピーにきわめて厳格な時代にできたフォーマットなのですね。同品質の音源がDRMフリーでリリースされるにはその旨の許諾を新たにアーティストからいただく(有償の場合が多いそうです)必要になるわけです。SACDの再生では暗号化を解くためのキーが復調回路に必ず求められるわけですが、日本のS社はとうの昔に対応素子を製造しなくなってしまい、現存するのは台湾のM社だけで、それも需要がないとしたら消えていくでしょう。OPPOがプレーヤー生産をやめてしまうので、SACDが再生できる機器は少なくなってしまいますね。SACDもDVD-AUDIOも合法的にリッピングできないので困ってしまいます。実質13ビットのMQA-CDには個人的になんの関心もありません。

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  2. 匿名さん、コメントありがとうございます。
    SACDとDVD-AがMP3とCDのブートレグ対策としてDRM実装した経緯でも、制作側を含むマーケットの反応は結果であり、その裏返しでDRM解除(=著作権保護)は違法コピーの蓋然性を高めてしまいます。いずれに致しましても仕切り直しが必要との論旨です。脈絡の無いMQA-CDの行は本稿とは無関係なのでお答えしかねます。悪しからず。

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