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The Wind Fiddler / 吉田篤貴 EMO Strings

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吉田篤貴 EMO Stringsによる2019年3月発売のアルバム「The Garnet Star」(ザ・ガーネット・スター)の中の1トラック。アートワークは宇宙と思しき背景に動的な球体がレイヤーするイラストレーション。ガーネットスターとはケフェウス座μ星が赤いため名付けられたとか*1。裏表紙には吉田篤貴さんがヴァイオリンを演ずるショット。

 レーベルはT-TOC RECORDS。録音は2018年10月29-31日、T-TOC STUDIOにて行われ、レコーディング・ミキシング・マスタリングはTakaaki Konno氏、ディレクターはMegumi Sasaki氏、サウンドプロデューサーはAtsuki Yoshida氏がクレジットされています。作曲はM5,9を除き吉田篤貴さん(M5:挾間美帆さん、M9:桑原あいさん)。







 Aの音が鳴りコンサートチューニングの様相がそのままイントロダクションへとつながります。コントラバスのリズムにチェロが主旋律をリフレインし、ヴァイオリンが加わり彼のアイリッシュミュージックを想起します。ソロがデュオ、デュオがトリオ、トリオがさらにアンサンブルへと重なるにつれ、音に重厚感が増す主旋律。そこへカデンツアでは不規則で不安定な旋律に変化します。

 再びサビのリフレインのあと、今度は明るくメロディアスなソロパート。そこで気付きます。ピュアであり、ハスキーであり、ツヤがあり、多様な弦楽器のサウンドテクスチャーが弱音から強音までリズミカルに現れては折り重なるダイナミクス。いつしかスピーディなテンポに心と体が揺れ動き、ついには迫力ある爽快なクライマックスを迎える頃には、複合的な音楽要素に触れる思いがいたしました。

 ライナーノーツに目を通すと、フィドル奏者へのオマージュとの記載があります。なるほど、録音を聞いているあいだ、演奏している10人のプレイヤーたち、吉田篤貴さん(Vn)、 沖増菜摘さん(Vn)、須原杏さん(Vn)、青山英里香さん(Vn)、梶谷裕子さん(Vn/Va)、萩谷金太郎さん(Va)、中田裕一さん(Va)、島津由美さん(Vc)、伊藤ハルトシさん(Vc)、西嶋徹さん(Cb)が”颯爽と興じるフィドル奏者たち”に覚えました。さぞやライブ会場で聞く”The Wind Fiddler”は心躍らせる作品でしょう。



吉田篤貴 EMO strings …

コラム 音楽メディアとフォーマット・MQA Part9



 
 先ごろ、ドイツのStereo.de誌に「Bob-Stuart-Interview in voller Länge」と題する MQAのボブ・スチュアート氏インタビューが掲載されました。内容からMQA懐疑論として拙稿Part8で取り上げたHIGHRESAUDIO社とXIVERO社のホワイトペーパーへの回答と捉えています。冒頭、スチュアート氏は上記ペーパーについてMQA論文を深く理解していないと率直にコメントしています。その上でAEG論文, MQA公式サイト"BobTalks", Stereophile, ComputerAudiophileのQ&Aを引き合いに否定的に反論しています。

 ペーパーはあえて懐疑的傾向を意図したもので、その目的の一つがMQAではデジタルドメインの音声信号へアクセスできないとして解析ツール供与にあったとみなせば、MQAコアのデジタル出力あるいはデコーダのアナログ出力でベースバンドがアップサンプリングされたかどうか判断するには十分だとのスチュアート氏のコメントはその回答であり、ハイレゾやハイレートが必ずしもロスレスでもオリジナルでもないという考えの下に、MQAはマスターをエンコードすることを目的としているとの説明に納得したかどうか、その判断はHIGHRESAUDIO社側にあると言えるでしょう。

 一方でMQA公式サイト上で"BobTalks"が始まりました。BobTalksではMQAプロジェクトの哲学、背景、技術解説が改めてなされていますが、従来のコンバータ処理の欠点やそれを克服するための現代のリマスタリングのエフェクト効果を疑問視し、MQAでは時間分解能、ノイズの安定性、アナログにじみに焦点を当てエンコードプロセスで録音素材の技術的分析を行いながら、音源に付加することなくアーチファクトを除去することで繊細で自然さ、明快で空間を感じることができるとするコンセプトを紹介しています。MQAは独特な言い回しが多いのですが、このプロセスも古い録音のfinger-print(指紋)を除去する"white-glove(白い手袋)"というフレーズで、言うなればくすんだ古い絵を掃除するようなものだとしています。

 またそもそもMQAとはマスター音源の品質を証明するプロセスでもありますが、その作業手段としてマスター音源のISRC(国際標準レコーディングコード)毎のエンコードのみを受け付ける基本姿勢や、マスター音源の出処を確認するための探偵作業に時間をかけたり、ときには契約の関係でアーティストのリリース承認がない場合などの記述もありますが、その出処についての情報開示が音楽ファンの関心事でもありました。そのアクションとして具体的に著名アーティスト作品のマスター音源ついての情報開示が始まっています。現時点で#3まで開示していますが、まだ今後も続くようです。

 さてドイツ・ミュンヘンハイエンドショー2017(2017/5/19-21)が開催されています。それに合わせるかのようにMQAがプレスリリースを更新しました。目を引くところは国内外ハイエンドオーディオメーカーとソニーミュージックレーベルのMQA参加表明ですが、注目すべくは他に2点。一つがネットワークモデュールサプライヤーの2社がMQAに参加表明したことと、もう一つがインディペンデントレーベルのコンテンツを代理運営をしているMerlin network社の参加表明です。

 一つ目ですがStreamUnlimited社とConversDigital社はネットワーク系のデバイス、Airplay, Chromcast, SpotifyConnect, Roonなどのネットワークサービスに対応するモデュールやソフトウェアの開発製造企業です。MQAはPCMベースですのでDAC刷新は必須ではありませんが、デコーダ(プログラム)の実装が必要になります。これらネットワークモデュールキットがAV製品やモバイルにインストールできるようになると、対応デバイスの拡大が予想できます。またメーカー側はMQA対応デバイス開発リソースの外注、導入コスト削減期待が得られる状況でしょうか。

 StreamUnlimited社はStreamSDK、ConversDigital社についてはモデュール実装に向けて既にメーカーと協議中との一節がありウェブサイトにはモデュールのMQAサポートの記述もありますので、いずれMQA対応製品が普及価格帯のゼネラルオーディオにも広がることを予感させます。ちなみにConversDigital社はUPnPコントロールアプリも開発・販売しており、そのmconnect playerは現状でTIDAL, Qobuzサービスに対応しています。すでにMQA対応しているネットワークプレーヤーのBluesound製品(日本未発売)はコントロールアプリ側でMQA認証マークが点灯しますので、もしモデュールのみならずソフトウェアでもMQA対応となれば、その汎用性が広がることは容易に想像できます。

 Merlin netowrk社は独立系のレコードレーベルなどのデジタルコンテンツのライセンスを統括的に運営管理している組織です。クラシックでお馴染みのNaxosをはじめ、K7 Records, Because Music等のロック・ヒップホップ・テクノ等々、幅広いジャンルのインディペンデントレーベルが参加しDeezer, GooglePlay, KKBOX, Pandora, Soundcloud, Spotify, VEVO, YouTubeのコンテンツ管理を行っているとされています。そのMerlin社がMQAに参加することはインディーズ系レコードレーベル(マイナーレーベル)の作品がストリーミング・サブスクリプションサービスのMQAカタログに載る環境が整うことにつながります。これらは間接的で環境整備的なアクションですが、結果として現れる日はそう遠くないかもしれません。




コラム 音楽メディアとフォーマット・MQA Part1 - MQAとは?
コラム 音楽メディアとフォーマット・MQA Part2 - MQA波及予測
コラム 音楽メディアとフォーマット・MQA Part3 - CAのMQA Q&A
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コラム 音楽メディアとフォーマット・MQA Part6 - TIDALのMQA対応
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