MQAについて今回は否定的な立場の意見を取り挙げます。Schiit Audio社が「
WHY WE WON'T BE SUPPORTING MQA(なぜ我が社はMQA対応しないのか)」という題名の見解を自社ウェブサイトに掲載しています。またその内容はDarkoaudioにてJohn H. Darko氏により「
Schiitting on MQA」として取り挙げられています。一番印象的なのはライセンス・フィーの行で、MQA対応はレコード産業を外部組織に移譲することを意味するのではないかというような危機感を表しています。
Bechmark社は自社ウェブサイトに「
IS MQA DOA?(MQAは生き残れるか?)」という題名で技術解説と自社の見解を表明しています。冒頭のセンテンスが論旨を表していますがHDCD, DVD-AそしてDSDと同じように一過性のものになるのかと見解を示しています。実はSchiit Audioも同様にMQAの先行きをSONYがプロモートしながらいまだに録音が少ないDSDと重ね合わせています。
ストリーミングやダウンロードなどのレコード産業にメリットなのかデメリットなのかという論点は、
前回の投稿で言及したStereophile誌面での考察と相対する意見でもあり、あるいはオープンソース・オープンフォーマットが最適という他の意見もあり、ここはいまだに議論の余地が残っているものという思いがあり、今回取り挙げました。
ストリーミングといえばTIDALのMQA対応の動向ですが、公式Q&Aにはファームウェアアップデートはまだランチしていないものの、もし利用できるようになればアナウンスすると示唆しています。その点が逆にTIDALの動向が定まっていないとする論拠にもなっているところでもありますが、TIDALのCDクオリティ音質のサービスを評価する声は多く、正式アナウンスを待つという状況はどの業界も同じなのではないでしょうか。
話は戻りますが、Benchmark社の解説にCOMPATIBILITY ISSUES(互換性の課題)というセンテンスがあり、他のDACメーカーに見受けられる主張と重なるものがあります。MQAはデコーダーとDACをセットとしデバイスとしてのクオリティを最適化しているということですが、DACメーカーの中には自社のリソースを使いたくソフトウェアデコーダーとしての汎用性を主張しているところもあります。
あるいはDACを切り分けられれば、現時点ではデコード及びアナログ変換後でしかイコライジング・ポイントがありませんが、もしデコーダーとDAC間にDSPを挟むことでEQなどが可能になればユーザーとしては利便性の向上を期待することができますので、MQAの主旨に反しない範囲でいずれ何らかのアクションがあればと思っています。追記参照
とは言え、先日別ラベルで
レビューしたMQA対応DACはマーケットで一番廉価なデバイスですが音質は非常に良く、また新たにMQA readyが数社追加され、MQA STUDIOのタイトルも内外で少しづつ増え続けている状況です。ストリーミングサービスとの関わりともシンクロしているフォーマットなので、いよいよ今後の進展を注視したいと思います。
追記:AudioStreamの記事でLavorgna氏がコメントしていますが、デコーダーにソフトウェアDSPを組み込むことでルーム補正やEQができるようです。しかしデコーダとDACの間に(サンプリング変換やアップサンプリングを含む)MQAのチェーンを壊すような処理を挟むことはできないようです。(引用:
MQA Continued By Michael Lavorgna • Posted: Jan 19, 2016)
またクリプトン社がMQA対応のアクティブスピーカー「KS-9Multi」をリリースしました。XMOSとFPGAを組み合わせ、XMOSでMQAデコードしFPGAでDSP EQを行い、最後にDA変換するという製品はMQAの可能性を感じます。
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