2010年4月に私的LS3/5Aを作ろう!の投稿を始め、早いのか遅いのか2年が経過しました。名機の名を拝借して連載することに後ろめたさのような気持ちがあったのも事実ですが、LS3/5Aを調べていくほど、オーディオ愛好家のみならず、世界中のDIY愛好家たちが様々な名機に挑戦しているということを知り、時代を超え愛され続けている工業製品の魅力を知ることになるのでした。
もしかしたらこの連載は本物のLS3/5Aをご所有なされている方々にとってはおちゃらけにみえるのかもしれません。気分を損なう文章があったかもしれません。しかしながらDIYの範囲で真剣に製作に取り組み、ときに考え悩みもしました。やはりそれは相手がLS3/5Aという偉大な名機であるからに他なりません。何卒ご容赦願います。
まとめ
エンクロージャー
フィンランドバーチ材積層合板12mm厚、硬質で美しい合板です。バッフル、サランネット枠もバーチ材です。内隅はビーチ角材で補強、剛重なキャビネットになっています。バッフル開口寸はオリジナルKEF製のユニットサイズですので、ユニット開口寸で再製しました。
オリジナルのキャビネット寸法は
Unofficial LS3/5A Siteから参照できます。拙SPのバッフル図面はオリジナルを参考に書き直しました。(部品やキット化した製品は
Falcon Acousticで販売しています。)
化粧用突き板
オーク(楢)材の突き板。本物なので質感が格段に良いです。但し、切断加工が難しいです。接着には木工用接着剤とアイロンを使いました。天然突き板は、研磨の程度と塗装で仕上がりの質感が替えられます。突き付けの作業が難しく要所にウッドパテを使いましたが、との粉の方が仕上がりが綺麗になるかもしれません。
塗装
キャビネット:
未晒し蜜ロウワックス
バッフル:カシュー、うすめ液
未晒し蜜ロウワックス
はニスやウレタンとは違う自然な仕上がりになります。
カシューは仕上がりは綺麗ですが、有臭で少々扱いにくいので水溶性ニスでも十分だと思います。
サランネット
素材はメーカーにより編み方が多少異なります。枠材とサランネットはタッカーで留めました。
オリジナルのサランネットとバッフルはテープで留めている様ですが、拙SPはハメコミで留めています。
ユニット
Tweeter: SEAS PRESTIGE 27TDFC H1189
Woofer: Vifa M13SG-09-08
オリジナルのKEF製ユニットは中古市場に出回っていますが、別メーカーの新品を代用として使うこともできます(メーカー名は控えます)。
拙SPは作りやすいシンプルな回路と現代的なサウンドにしたかったので、特性の安定的なユニットを選びました。ユニットのサイズはオリジナルとほぼ同サイズです。
クロスオーバー・ネットワーク設計
ユニット特性がオリジナルと異なるため、クロスオーバー・ネットワークも当然異なります。ネットワーク設計は
My Speakerさんのプログラムを利用させて頂きました。このプログラムが無ければ今回スピーカーを作ることが出来ないくらいに大変有用なサイト&プログラムです。
ネットワーク・パーツとレイアウト
- 基板:MDF材 150mm*110mm 程度 2枚
- 端子類:M3ねじ、ナット、平ワッシャー、M3.5圧着端子、熱収縮チューブ、ファストン端子 適宜
- 配線材:BELDEN 1810A 1m程度
- パーツ(Woofer):2セット
- 空芯コイル:0.75mH、コンデンサ:10μF、6.8μF、セメント抵抗:10Ω
- パーツ(Tweeter):2セット
- 空芯コイル:0.3mH、コンデンサ:4.7μF、セメント抵抗:3.9Ω、8.2Ω
並列回路。バイワイヤ接続できるよう、配線材をそれぞれ作っています。接合は最終的には圧着端子を使いました。知識不足とネットワーク製作に不慣れのためコンパクトにまとめることが出来ませんでしたので、出来るだけシンプルなレイアウトを心がけました。
基板の配置
オリジナルはネットワーク基板をツイーターの真裏に配置していますが、ハガキ大サイズでは真裏に配置できませんでしたので背面に配置しました。基板の固定にはビス留めが確かですが、エンクロージャーにビス穴が出来ることを嫌いマジックテープで留めています。接着力は意外とありますが、長期的には問題があります。
バインディング・ポストとジャンパー線
バインディング・ポストは汎用品。
ジャンパー線はBELDEN 8470の切れ端をつなげています。
デッドニング・密閉
制振材にはレジェトレックスを使用しましたが、素材が通電するためオトナシートに貼りなおしました。オリジナルはカーボン系のシートを貼っているそうですが、瀝青系なので類似素材として使っています。吸音材は内壁面にニードルフェルト、キャビネット内部にサーモウールを入れました。制振・吸音しないと箱鳴り、歪みっぽく乾いた響く音になります。デッドニング材をキャビネット内部に取り付けることで歪みや余分な響きが抑制され、音がより豊かに聴こえるようになります。
オリジナルはキャビネットが密閉するようユニットとバッフルの間、バッフルとキャビネットの間、バインディングポストやビスの開口部、それぞれに密閉するための工夫がなされています。
拙SPはバッフルとキャビネット間に戸当たりテープを取り付けています。それ以外は保留中です。準備しているアイデアは、ユニットとバッフル間はプチルゴム、ビスの穴はエポキシで埋めるというものです。
またオリジナルはバッフルの共振を抑制するためにツイーターの周囲にフェルトを付けています。
デザイン優先で始めた自作スピーカー製作ですが、スピーカーを作っていくと音づくりの工夫や難しさを体験し、小さなキャビネットに音以外の楽しさがたくさん詰まっていることを実感した次第です。この楽しみはDIYでしか味わえず、2年かけて作って良かったと思っています。
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まとめにあたり、まず音質云々を言うつもりはありません。それは音が良くないからではなく、たぶん皆さんに伝わらないからです。聴きたいならば作りましょう!世界に一つしかないスピーカーの音を味わえるのは自分だけという、ちっぽけな満足感と喜びかもしれませんが、それを少しでもお伝えできたらとの想いを込めて、このまとめとさせていただきます。ご精読ありがとうございました。
おしまい。
-目次-
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MYスピーカーを作ろう!
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.1 情報収集編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.2 エンクロージャー編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.3 キャビネット編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.4-1 ユニット選定編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.4-2 クロスオーバーネットワーク検討編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.4-3 吸音材検討編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.4-4 ユニット決定編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.5-1 ネットワーク実体図作成編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.5-2 ネットワーク製作編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.5-3 ネットワーク詳細編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.5-4 制振材・吸音材取付け編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.5-5 仮組立とファーストインプレッション編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.5-6 周波数測定編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.5-7 セカンドインプレッション編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.6-1 エンクロージャー突き板貼り編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.6-2 エンクロージャー突き板研磨編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.6-3 エンクロージャー バインディングポスト穴開口編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.6-4 エンクロージャー バッフル塗装編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.6-5 エンクロージャー バッフル サランネット張り編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-1 完成前の改良 デッドニング編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-2 完成前の改良 バイワイヤ対応編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-3 完成前の改良 ジャンパ線とネットワーク配線編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-4 完成前の改良 ネットワーク取付編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-5 完成前の改良 サードインプレッション編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-6 完成前の改良 ネットワークトラブル編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-7 完成前の改良 ネットワーク改良編-1
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-8 完成前の改良 ネットワーク改良編-2
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-9 完成前の改良 ネットワーク改良編-3
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-10 完成前の改良 吸音材改良編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.7-11 完成前の改良 特性測定編
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私的LS3/5Aを作ろう!-No.8 完成編
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